第五十九話
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如何とする?」
「まずは陛下を……むっ、マリクル王子! 危ない!」
俺はマリクル王子を突き飛ばした。
頭上に影が差したかと思った瞬間、先ほどまで俺たちが居た場所へ投槍が幾本も突き刺さる。
あの時と同じように、いやあの時には無かった焼け跡の灰や炭化した木片、それに砂や塵を巻き上げて風圧が巻き上がった。
……もっと早いタイミングで現れるよりかマシではあったが、今、最も遭いたく無い敵が眼前に……
「これはヴェルトマー公、ご苦戦のようですな。 ……そして、小僧! 貴様にふさわしいな。 そのボロクズのような形は!」
ほんの数騎の竜騎士であったが、この状況では……あやうく絶望や諦めに陥りそうな心を奮い立たせる。
こうしている間にも兄上率いる援軍がこちらに向かっているのだ!
「トラバント! ヴェルトマーもドズルも、この様子ではおぬしに謝礼を払うどころでは無いぞ! 疾く去ねぃ!」
「ふん……ならば貴様を殺って気晴らしとでもするか……そして」
「そして、何だ?」
「……前金ぶんの働きはせねばなるまい!」
「くっ……」
いつぞやのようにトラバントは危険極まりない投げ槍を俺に放った。
わかっていても余りにもの速さに避けきれず血しぶきが舞う。
マリクル王子はトラバントの取り巻きの竜騎士数人相手をものともせず斬り渡っているが、さすがに援護を求めることはできない。
火傷とマンフロイに負わされた傷、それに今しがた受けた傷がひどく痛み、気力が尽きたらそのまま死んでもおかしくは無いなと思いながらも、だが、状況を打開する為に考える。
しかし……
「公! 何をなさる!」
「奪いたくないから、……解放を、うぐ……次に癒しを、護って! 炎よ!」
「いったい、どうしたというのだ!」
アルヴィスはトラバントに限らず、燎原之炎を手当たり次第に動く者へと放ち続け、何騎かの飛竜が直撃を受け墜落し、乗り手が身動きの取れぬまま焼き殺されて行く……
「して! 奪って! あなたを、登るから!……心あるうちに頼む、殺してく……焼き尽くしたい空を!」
「く、狂ったというのか!」
同意を求めるようにトラバントは俺に視線を向けた。
アルヴィスの放った炎を巧みな手綱さばきで避けたトラバントだったが、味方の騎竜と衝突し墜落しはじめた。
……魔将となってしまった者を"ヒト"に戻す方法はあるのかもしれない。
だが、この状態のアルヴィスを無力化し、安全な場所に連れて行くなどできようものか……
そして……
"心あるうちに頼む、殺してくれ"、そう彼は訴えた。
ならば……
ろく
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