反転した世界にて7
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「私、赤沢さんに告白するわ」
昼休み。飢えた生徒たちでごった返す学食の端の方で、昼食を囲んでいる一つのグループの姿があった。
――その一角にて、声を潜めながら、しかし堂々とした風情と確固たる覚悟を決めた表情で、白上翔子は宣言した。
「今日の放課後に、伝えるの」
「今週のジャ○プ読んだ?」
「まだー」
「ワンピだけ」
「富○ェ・・・」
しかし、相席している四人の友人たちは、翔子の世迷い言に関心を寄せることはなく。
優先度的には、今週号のジャ○プの話題よりも低いようだった。
「聞きなさいよ」
「……や。好きにすればいいんじゃないの?」
「応援してるわよ? 頑張ってね」
「残念会は、またカラオケでいいかな」
「そだね。最近行ってないし」
既に翔子が撃墜したあとの予定を話し合う友人たち。あまりといえばあまりの言い草だったが、それも致し方がない。
翔子のクラス内での評価は、まあ、オブラートに包んで述べるのであれば、『友人以上は生理的に無理』とか、そんなんである。
持ち前の明るさとユニークさ(下ネタ主体)故に、その容姿から彷彿されるレベルで、忌み嫌われているというほどではない。……ではない、が。それでも、やはり大多数の男子からすれば、翔子は好んでお近づきになりたいタイプではないのであった。
曰く、『近づくと妊娠されそう』とか。
「ふ、ふふん。あんたら、私がフラれることを前提にしているみたいだけれど。ふ、ふふ。今回ばかりは、そうはいかないんだからね」
「あー、やだやだ。これだから処女を拗らせた女って、救えないのよ」
「ちょっと優しくされると惚れちゃうもんね」
「まあ、今回はねえ。赤沢くんも、もうちょっと女心ってのをわかってくれればいいのに……」
「そうそう。お弁当なんか作ってきたら、そりゃ、翔子も舞い上がって勘違いしちゃうわよ」
ここにきてようやく、翔子の方に話題を向け始める友人たちであったが、口々から飛び出す台詞は、悪意と憐れみと罵詈雑言で構成されたものだった。
――しかし、友人たちの言葉は客観的に見て、全て正論であると言わざるを得ない。――唯一反論できる存在がいるとするならば、よほどの物好きかブス専だけだろう。
「ま、舞い上がってなんかないやいっ!」
「舞い上がってたじゃん」
「HR中に弁当食べて廊下に立たされた女子、私、初めて見た」
「赤沢くんもドン引きしてたけど、翔子全然気づいてなかったよね」
「赤沢くんが、っていうか、クラス全員ドン引きしてたからね」
ここぞとばかりに追い立てる友人たち。
――そう。今回と同様、これまで幾度か、翔子はひょんなことで異性に惹かれて惚れて、その思いの丈をぶちまけてやろうと友人たちの前で宣言をしたことがあった。
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