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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて7
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された理由について、思いを巡らせていた。
 僕はムッツリスケベなんていう言葉からはほど遠い位置に存在する健全な男子ではあるけれど、でもやっぱり、思春期なのだ。
 ――まあ、ものっすっごい、期待しまくっていた。
 
 何を期待していたかなんて愚問、わざわざ言葉にする必要はないだろう。だろうけど、これは僕が僕の妄想に確信を得るために、敢えて明言をさせてもらいたい。
 ――もしかして、告白なんじゃない?
 なんつって、なんつって! 我がことながら、自分で自分が恥ずかしい。思春期ではあるけど中二は卒業したはずなのに。しかし、ただ女の子に呼び出されただけのことで、僕はこんなにも興奮を露わにしちゃっている。どんだけ恥ずかしい奴なんだよと。自分で自分をぶん殴りたい。授業中じゃなかったら、頭を机に打ち付けているところだ。

(告白? いやいやまさか、……でも、あり得ないとは言い切れない。言い切れないっていうか、あり得なくない。どころか、むしろそれ以外にあり得ない? なくなくない? だってただ話をするだけだったら、屋上になんか呼び出す必要ないわけだし、白上さんがわざわざ僕を屋上に呼び出した以上、それはつまりそういうことであって、そういえばあの時の白上さん、やけにギクシャクしてた気もするし、そもそも僕は白上さんのことを良く知らないから、あれがぎくしゃくしていたのか、素なのかは判別が難しいところだけど、でもあれがそうなってどうなって……)

 頭が沸騰しているというのは、今の僕のような状態を示す言葉なのかもしれない。
 ――正直、今の僕はあまりにも浮ついている。今まで生きてきた人生の中で、最も気持ちがはしゃいでいると言っても過言ではないだろう。
 だけど、それでも。普段ネガティブシンキングを拗らせまくっているこの僕が、これだけ調子に乗ってしまっているのには、当然、論理的な裏付けがあるからで。
 身も蓋もない言い方をしてしまえば、『この世界なら、白上さんが僕のことを好きでも不思議じゃないよな』、ってこと。
 この時すでに、僕は自分が自分の知らない世界に放り出されていた恐怖っていうヤツを、完全に見失っていた。それどころか、もう普通に、喜んでいたといっていいと思う。昨日まで――時間にすればほんの十数時間前までは、僕は何もかもが反転したこの世界で、どのように生きていくか、という命題に苦悩していたはずなのだけど。そんなことはきれいさっぱり忘れて、ただただ放課後の呼び出しについて思いを馳せて、一人で一喜一憂……いや、一喜二喜と心を躍らせている。
 ホント、どうしようもない。
 
 ――キーンコーンカーンコーン

 人生で最も長く感じた一限がようやく終わりを告げて、HRの時間がやってくる。
 僕はその間、すぐにでも屋上へと馳せ参じたくなる自分を抑えるのに
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