第八十話 さあ、どっちが勝つんだ?
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すると彼女はその切れ長の瞳を向けてくる。
「私はベニ」
「そうですか」
「敬語はいい。その方が気が楽だ」
「……承知した。ならベニ、貴殿ほどの実力があれば通り名くらいありそうなものだが?」
この世界では、それなりの実力者なら二つ名を頂くことが多い。
それは、強者で平民のほとんどがギルド登録をしていて、その実力に魅せられた者達が畏怖(いふ)や憧憬(どうけい)を込めて二つ名をつける。
かの『土波(つちなみ)』ことヤーヴァスも自然とその強さからそう呼ばれるようになったのだ。
「さあな」
表情を動かさずベニは言う。
二つ名は無いのだろうかとミラニは首を傾げる。
「そうか」
「そんなことよりも、私はお前に興味があった」
「私に?」
ミラニは眉を寄せて聞き返す。
「ああ、若干十六歳にしてギルドランクB。その実力はAランクにも劣らないと聞いている。私の村ではお前の噂も流れていた」
「う、噂だと?」
「そうだ。お前の二つ名は有名だからな」
「う……」
ベニの言葉に恥ずかしそうに頬を染める。
それを見た闘悟も「おや」と思った。
ミラニにも二つ名があると聞いて興味が湧いた。
彼女の強さならそれも当然だと思ったが、前に二つ名のことを聞いた時は教えてくれなかった。
その時はまだ彼女には無いのかとも思っていたのだが、やはりミラニには二つ名があったようだ。
「う、噂というのはそれほど……ひ、広まっているのか?」
ミラニが恐る恐る聞く。
何だか様子がおかしい。
まるで広まっていることを許容していないような感じだ。
「少なくとも私の村の周辺では知らない者はいなかったな」
「くっ……」
眉間にしわを寄せて嫌そうに首を振る。
その様子を見たベニは微かに首を傾げる。
「どうした? 二つ名は誇るべきことだぞ?」
「う……いや、それはそうだが……」
何か割り切れないような感じで言葉を濁している。
「何を気にしている? 有名だぞ……『花柄(はながら)の魔女(まじょ)』?」
「その名で呼ばないでくれぇぇぇぇっ!!!」
いきなりミラニが周囲に轟(とどろ)くような嘆き声を飛ばす。
その声を聞いて誰もがポカンとする。
「どうやらミラニ・クロイセン選手の二つ名は『花柄の魔女』だそうです!」
「ん〜一体どのような意味で名付けられたのでしょうか?」
やっと口を挟めたのか、モアとフレンシアが言葉を観客に届かせる。
「だからその名で呼ばないでくれぇっ!」
ミラニの悲痛な叫びで、モアもさすがにたじろいでいる。
頭を抱えながら叫ぶその
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