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剣風覇伝
第八話「血の晩餐」
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 タチカゼが通されたのは少し薄暗いがとても広いダイニングルームだった。細長くて大げさなターンテーブルと長椅子は、伯爵とタチカゼが座るためだけに用意されていた。
 伯爵が、奥の食卓の方に座り、タチカゼは反対側に座った。
 これだけでもすごく異様である。もっと異様なのは、その細長いテーブルの横をどれもものすごい美女のメイドたちがずらりと囲んでいるのだ。
「さあ、宴にしよう。オードブル(前菜)はなにかな?」
 伯爵がベルを鳴らすとコックじきじきに料理を運んできた。
「う!」
 タチカゼは、思わず鼻をつまんだ。
 あまりの匂いに絶句した。
 コックが不気味な笑みを浮かべて持ってきたものそれは人間の頭がい骨だったのだ。
「伯爵様、人間の脳みそのソテーでございます。今日は趣向をこらして頭蓋を皿にして盛り付けました。どうでしょう?これだけでもとても食欲をそそられるでしょう?」
 タチカゼは、自分のところにも同じものが来るのを声が出ずに見ていた。
「おっと」
 コックがよろめいた拍子に頭蓋が割れて、なかの脳髄が少しはみ出た。
「ああ、これは失礼、でもあなたも運がよろしいですな?ここらでは脳みそはとても珍味で高級なものなのですから」
「あ、あのこれはどういうことです。伯爵?あなたほどの人が人間の脳みそなんて食人鬼でもないのにどうして」
「うん?ここらではこれが普通なのだが、人間など、殺して生き血を吸う以外なんの役に立つのかね?まあ、商売などさせておけば、金がもうかってよいがね」
「生き血を吸うだって?なにを!」
「そういえば、タチカゼどのも妙に生々しい肌をしておりますな、まるで、人間のようだ。なあ、執事?」
「ほう、そうでございますな、いや、なんとも美味しそうな」
「う、うわああ!」
 タチカゼは絶叫して、腰の刀を抜こうとした、それがない!
 そうだ、刀は風呂の時に置いたままだ。
「我としたことが、ふ、不覚!」
「どうしましたかな、タチカゼ様?」執事がぎょろりとこちらを見る。
「い、いや、どうもわたしは具合が悪いようでせっかくですが早めに部屋で寝たいのですが?」
「はあ、そうですか。では本日のメインディッシュの美女の生き血は、どうしましょう」
 タチカゼは気が気じゃない、少し目線をそらしてメイドたちを見るとなるほどたしかに美女ぞろい、だがなんだか顔が青白く見えだしたではないか。そしてメイドの一人の首に、噛まれたような跡が。
それでタチカゼはこの者らがなにか分かった。
「おまえたち、人間じゃないな?」
「うん?はあ、わたしが人間かだって?そんなわけないじゃないか。タチカゼ殿も妙なことを申される。わたしは人間たちの上に立つ存在。夜の眷属のもっとも高貴なるものにてもっとも強大なるもの、すなわち、ヴァンパイア!ああ、君の国では
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