第三十三話 疑惑
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「それも確証はないか……」
「……申し訳ありません」
「厄介だな」
シトレ本部長が溜息を吐いた。そしてそのままじっと私の顔を見た。
「今回の作戦の成否については私だけではない、政治家達も関心を持っていた。それだけに失敗した事については酷く落胆している。そして彼らはブラウンシュバイク公が見破ったという事に疑問を抱いているのだ」
「……つまり真実は必要とされていない、生贄が必要とされていると……」
「……そうは言っていない、そうは言っていないが……」
本部長の歯切れが悪い。
ここ近年、同盟軍は敗北が続いている。それだけに今回の作戦に政治家達も期待していたのだろう。だがそれが失敗した。重なる敗戦に同盟市民の不満は高まっている、政治家も軍上層部も自分達に責任は無い、裏切り行為が有ったため同盟は敗れた、そう責任転嫁したい、同盟市民の不満を逸らしたいという事だろう。そしてその手の責任を押付けられるのは常に弱い立場の人間だ。
「この件が片付かない限り大規模な軍事行動は難しい……。トリューニヒト国防委員長はそう考えている。私も同感だ。君の言った通り、今回の敗因はブラウンシュバイク公が見破った事によるのかもしれない。しかし証拠が無い、今のままではどうにもならない……」
「……しかしだからと言って……」
「分かっている。厄介な事になった」
シトレ本部長が溜息を吐いた。
誰もがこの作戦の失敗を情報漏洩者の所為にしたがっている。たとえ真実はブラウンシュバイク公が見破ったとしてもだ。厄介な事になった、これから同盟軍内部で魔女狩りが始まるかもしれない……。
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