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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三十三話 疑惑
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ンカチで頬を押さえた。断る事は出来ない、断れば当然だが報復が有るだろう。下手に出て関係改善を望んだにも関わらず顔を潰したとして……。一体どんな報復が有るか……。オッペンハイマーは死んだ、コルプトは逼塞しベーネミュンデは自ら死を選んだ。我々には……、ルンプはまだ良い、私は敵対者とみなされ徹底的に潰される事は間違いない。

「早速資料を用意致します」
「私も早急に……」
我らが協力を約束するとブラウンシュバイク公は穏やかな表情で頷いた。先程までの冷たさは欠片も感じられない。

「私の両親の事件についても資料が有るはずです。間違いなくそれも用意してください」
「そ、それは……」
「あの男の命令を受けた人間が殺した、そうでしょう?」
ルンプ司法尚書が困惑している。資料を出して良いのかという事の他に何故知っているのかという疑問があるだろう。付添いの軍人二人も知らなかったようだ、懸命に動揺を抑えている。

「御存じなのですか?」
私が問いかけるとブラウンシュバイク公が軽く頷いた。微かに笑みを浮かべている、何処か楽しそうな表情だ。
「昔、親切な人が教えてくれました。なかなか義理堅い人で……」
「それは……」
「皇帝の闇の左手だった人です」
「!」

ルンプと顔を見合わせた。以前にも公が闇の左手なのではないか、何処かで関係が有るのではないかという噂は有ったが事実だったのか……。
「資料の件、宜しくお願いします」
「必ず」
「それとこの件については内密にお願いします」

ルンプも私も無言で頷いた。それを見てブラウンシュバイク公がまた笑みを浮かべた。さっきの楽しそうな笑みでは無い、凍て付く様な笑みだった。もし洩らせばどうなるか……、その事を思わせる笑みだった。



宇宙暦796年  8月 15日  ハイネセン 統合作戦本部  ヤン・ウェンリー



本部長室に入ると直ぐに本部長が声をかけてきた。
「御苦労だったな、ヤン准将」
「いえ、労われる様な事は何も……」
私の答えにシトレ元帥が苦笑を洩らした。ソファーに座って本部長と顔を見合わせる。顔色が良くない、少し疲れているのかもしれない。

「今回の作戦、失敗の原因は何処に有ると君は思うかね」
「……」
「答え辛いか……、情報漏れが原因だと思うか?」
本部長がヒタっと視線を合わせてきた。
「さあ、それは……」
どう答えれば良いか、溜息が出た。

作戦失敗後、遠征軍の総司令部では失敗の原因について皆が疑心暗鬼にならざるを得なかった。リューネブルク中将はブラウンシュバイク公がこちらの作戦を見破ったと言っていたが本当にそうなのか、実際には情報が漏れていたのではないか……。時に密やかに、時に声高に、総司令部の彼方此方で深刻な討議が起きた。

今回のイ
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