第三十三話 疑惑
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せた。
「ではこの呼び出しは大公は知らぬ事なのでしょうか」
「いいえ、知っておりますよ、ルンプ司法尚書。義父は私に任せると言いました」
「……」
可愛げがない。少しは不愉快そうな表情でも見せれば良い物をまるで表情を変える事が無い。おそらくはルンプも同じ思いだろう。何処か詰らなさそうな表情をしている。少しぐらいあたふたして見せれば良いのだ。多少は溜飲が下がるだろう……。
「お話しに入っても宜しいですか」
「もちろんです、我らに一体どんな用が有るのでしょう」
私が答えるとブラウンシュバイク公がじっと我らを見た、そして微かに笑みを浮かべた。
「そろそろカストロプ公を処分しようと思います。内務省と司法省には彼の犯罪についての資料が有るでしょう。それの提供をお願いしたいのです」
「……」
思わず目を見張り、そしてルンプと顔を見合わせた。彼も驚いている。
オイゲン・フォン・カストロプ公爵、財務尚書の地位にあるが評判の悪い男だ。いや評判だけでは無い、実際にやっている事も碌なものではない。しかし処分? まさかとは思うがあの事を知っているのだろうか。それで今回報復しようとしている? まさかとは思うが……。
「カストロプ公は財務尚書として帝国政府を支える国家の重臣の一人です。いくらブラウンシュバイク公といえども彼を処分など軽々しく……」
「フレーゲル内務尚書、詰らない事は言わないでください」
「……」
ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。ルンプが立てた音だ。それを聞いてブラウンシュバイク公が低く笑った。
「お二人に話す以上、リヒテンラーデ侯の了承は得ています。その程度の配慮も出来ない愚か者と思われたとは……、心外ですね」
「そういうわけでは……」
語尾が小さくなった。ブラウンシュバイク公が冷たい目でこちらを見据えている。口元には笑みが有った。
「命じても良いのですよ、資料を出せと。ですが成り上がりの若造にそう言われたのでは屈辱でしょう」
囁くような声だ。背中に悪感が走った。口調は穏やかだが凍り付く様な冷やかさが有る。さっきの会話を聞かれていたのだろうか……。
愚かな事を口にした、生まれはどうあろうと相手はブラウンシュバイク公なのだ、そして軍の重鎮でもある、軽く見る事など許されない。そしてブラウンシュバイク、リッテンハイム、リヒテンラーデ、軍が協力体制を取っている以上、公の依頼は命令と同じ強制力を持つ。
「ブラウンシュバイク公、御冗談はお止め下さい、我らは」
不満になど思っていない、そう言おうとしたが公は取り合わなかった。
「それに内務尚書とは色々と有りましたからね。この辺りで関係を改善したい、そう思ったので協力をとお願いしているのですよ」
「……」
顔が引き攣った、汗も流れている、慌ててハ
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