13話:平穏は波乱の幕開け
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後
ダレンは何も考えることが出来なかった。なぜマリがここにいるのか、なぜ隣で寝ているのかさえ。何も考えることができないまま、その瞳はただマリを見つめていた。
「…………少女誘拐?」
ポツリと、誰かが言った。
「はっ……違う! そんなことしてない!」
その言葉にわれにかえったダレンは必死の否定をした。彼は罪状にそんなものを加えたくないのである。
「なんだ、お前ら。騒がしいが、何かあった…………少女誘拐か?」
「ちっがーーーうっ! 来て早々、変なことを言うな、サイファー」
「何々、どうしたの?」
ダレンの叫び声で、カレン、ヴェイロンなど全員が集まってしまった。部屋に入るなり、状況を見て固まってしまう。
「ん? 待て、この娘は……」
「そうだよ……マリに見えるよ。ったく、何がどうなってんだよ!」
「落ち着いてください、ダレン。僕たちが部屋に入ったときは既に彼女はいました。何か心当たりはありませんか?」
「そんなのはねぇよ、フォル。でも……何かあった気がするかも……」
思い出せそうで、思い出せない。頭のもやもやは、全く晴れなかった。
「まー、とにかく、私たちは仕事があるわけで? このことについてはそれが終わってから考えましょう……ダレンの少女誘拐については」
「まさかの確定っ!?」
この状況をうまくまとめたかに見えたカレンだったが、それは冗談も含まれていた。彼女はこの状況を楽しんでいた。
「ステラ、ダレンと一緒にお留守番お願いね〜」
「わかった、お姉ちゃん」
「それじゃあ、よろしく」
最後にウィンクを残して、カレンは部屋から出ていった。ステラとダレンを除いた他の者たちも後についていく。
「ふざけやがって、あの女……」
「ダレンお兄ちゃん、ちょっとかわいい」
「はぁ?」
「あんなに慌ててるの、初めて見たから」
「しゃべれるようになったと思ったら、生意気言いやがって」
「えへへ」
一見、和やかに見える会話のなかでも、ダレンの心は穏やかではなかった。ダレンの想像をはるかに越えることが起こった。今までこの世界では、ダレンがあらかじめ知識として知っていることが起きていた。それ故に、知らないことが起きると、対処ができない。知識というものは、恐ろしい。
「しかし、起きないな」
「えっと、マリさんって、もしかしてお兄ちゃんが前に言ってた女の人?」
「そうだよ、わけがわからないよ」
「まだ、起きないね」
そう言ってステラがマリに触れようとした時、マリがピクリと動いた。まるで、なにかに反応するように。
「う……ん、あれ、今何時だっけ……」
マリが起きた。ダレンは動けず
[8]前話 前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ