第一幕その一
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第一幕その一
舞台祝典劇ニーベルングの指輪
第一夜 ワルキューレ
第一幕 ヴェルズングの血
夜の吹雪の中を一人の男が駆けて来る。
灰色の軍服に身を包んでいる。軍服は四つボタン折襟のものでありその上にカーキ色の厚いコートを着ている。ブーツは黒である。
だがその軍服もコートもブーツもぼろぼろになっている。その姿で今吹雪の中を彷徨っている。
金色の髪を後ろに撫で付けているが乱れている。青い目は鋭い光を発している。顔は彫が深く若々しい。鼻が高いのが印象的だ。そして背は高く引き締まった顔をしている。
「あれは」
彼は逃げ惑うようにして進んでいたがやがて目の前に屋敷を見た。それは豪奢な屋敷であり宮殿を思わせる程だった。それでいて堅固でありさながら要塞の様でもあった。
その屋敷から大きな一本の木が出ているのが見える。それはトネリコらしい。若者はその屋敷を見てその玄関を開け左右対称の雪に覆われた庭を越えそして樫の木の扉を開けた。
中は大広間になっていた。暗く周りはよく見えない。その中に入ってから言うのだった。
「この屋敷が誰のものであろうとも」
今にも倒れ込みそうな声だった。
「私はここで休まなければ」
「?あれは」
ここで白いイブニングドレスに身を包んだ美しい女が彼の前に出て来た。ブロンドの髪を長く、腰まで伸ばし青く澄んだ瞳をしている。麗しい顔をしており鼻は高い。唇は薔薇色だ。何処となく今入って来た若者に似た顔をしていた。
「どなたなのかしら」
「水を」
ここで彼女は若者の声を聞いたのだった。
「水を」
「気を失ってはいないのね」
それは今の言葉でわかった。
「生きてもいるわ。それに」
ここでその若者を見た。その姿を見て感じたことは。
「疲れ切っているようだけれど勇ましい人のようだわ」
「水を」
「ええ。わかりました」
女は若者の言葉に頷いた。
「暫くお待ち下さい」
一旦その場から去ってそのうえで水が入った水晶のグラスを持って来た。それを彼に差し出すのだった。
「どうぞ」
「おお、有り難い」
若者はそのグラスを受け取るとすぐに飲みはじめた。そうしてその水を飲み終えてから女に対して穏やかな声で礼を述べるのだった。
「冷たい水が私を元気付けてくれた」
「そうですか。それは何よりです」
「疲れもずっと軽くなり勇気も出て来ました」
こうも述べるのだった。
「それにです」
「それに?」
「私の目を喜ばせてくれるのはその美しいお姿」
女を見ての言葉である。
「私に水を下さったのは」
「この家と私はフンディングのものです」
「フンディングといい
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