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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十八話 ゼーアドラー(海鷲)
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太い声で促した。周りも皆頷いている。ミュラーはちょっと迷うそぶりを見せたが一つ息を吐くと話し始めた。
「エーリッヒはここにいる皆さんの事を良く知っています」
「それはそうだろう、俺達はミューゼル提督の下に居るのだからな」
ビッテンフェルトの言葉にミュラーは首を横に振った。そしてノロノロとした口調で言葉をだした。
「そうじゃないんです。エーリッヒは士官学校時代、皆さんのシミュレーションデータをダウンロードしていたんです。そしてそのデータを分析していた」
皆が凍りついた。信じられない物を見たようにミュラーを、そして皆を見ている。
「馬鹿な……、どういう事だ、ミュラー准将」
呻くようにメックリンガー少将が問いかけた。
「エーリッヒは士官学校のシミュレーションシステムに蓄積されているデータからこれはと思う人物のデータをダウンロードしていました。大体三十人程のデータを落としていた。その中でも良く見ていたのは……」
「良く見ていたのは……」
ビッテンフェルトが促す。それに応えるようにミュラーが有る方向に視線を向けた。皆も釣られたように視線を向ける、そこには……。
「ロイエンタール少将とミッターマイヤー少将です」
ロイエンタールとミッターマイヤーは沈黙している。何を言って良いのか分からないのだろう。皆が沈黙する中、ミュラーの声が流れた。
「攻守柔軟にして知勇のバランスが良い、そう言ってロイエンタール少将を絶賛していました。そして同じように絶賛していたのがミッターマイヤー少将です。神速にして理に適う、そう言っていました」
「……」
攻守柔軟、神速にして理に適う。確かにその通りだ、ロイエンタール、ミッターマイヤーの用兵を評するのにそれ以上の言葉は見当たらないだろう。
「高く評価されている。喜ぶべきなのだろうな」
ロイエンタールがようやく口を開いた。絞り出す様な口調だ。そして視線はグラスに固定されている。
「他にもワーレン少将、ビッテンフェルト少将、そして……」
ミュラーが俺とビッテンフェルトを見て口籠った。俺もビッテンフェルトもヴァレンシュタインに注目されていた。背中に悪寒が走った。夢中で手に有ったグラスを口に運ぶ。咳き込みそうになったが必死で耐えた。ミュラーを見据えて答えを促した。
「そして?」
「……ルッツ少将、ファーレンハイト少将のデータを良く見ていました」
「!」
驚愕が皆の顔に浮かぶ。ルッツ、ファーレンハイト……、二人とも前回の戦いで戦死した。ヴァレンシュタインがいずれ邪魔になるから殺したと言っていた……。
「馬鹿な、一体どれだけのデータをダウンロードしたと言うのだ。それを全部検証したと言うのか? そんな事が……」
メックリンガー少将が呻いた、語尾が震えている。その呻き声を押さえつ
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