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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十八話 ゼーアドラー(海鷲)
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14日 オーディン ゼーアドラー(海鷲) アウグスト・ザムエル・ワーレン
「ここに来るのも随分と久しぶりだな」
「そうだな、最後に飲んだのはカストロプの反乱征伐の前だから、もう半年になるか……」
俺とビッテンフェルトが話していると皆が口々に感慨深そうな声を出した。もっともカストロプの名前には微妙な表情をした人間もいる。
ケスラー、クレメンツ、メックリンガー、アイゼナッハ、ビッテンフェルト、ロイエンタール、ミッターマイヤー、ミュラー、そして俺。あの時もこの面子で飲んだ、あれから半年……、今一つピンと来ない。
「あれから半年か……。とてもそうは思えんな」
ミッターマイヤーがそう呟くとウィスキーを一口飲んだ。大きな声ではないが妙に響いて聞こえた。
「同感だ、とてもそうは思えん。十年ぐらい経ったような気がする」
ロイエンタールの言葉に同感だ、皆も頷いている。確かに十年ぐらい経ったような気がする。とにかくこの半年は事が多かった。
「代替わりが二度有ったからな、その上即位されたのが女帝陛下だ。普通なら政変でも有ったのかと思うところだろう」
ケスラー参謀長の言うとおりだ。僅か半年の間に皇帝が二人死んだ。一人は心臓発作と言われているが呪い殺されたと噂されている。もう一人はテロによる爆殺だった。どちらも尋常な死とは言えないだろう。
「随分と人が少なくなったな」
ミッターマイヤーが店内を見渡して呟いた。確かに客が少ないようだ、以前はもっと人が多かった。決して煩くは無かったが店内には活気というか華やかさが有ったはずだ。今は閑散としている。
「七百万人も死んだからな、寂しくもなるさ」
ロイエンタールがウィスキーを一口呷った。七百万、その数字に皆黙り込む。重い数字だ、やりきれない、俺も一口グラスを呷った。皆も同じようにグラスを呷っている。思いは同じなのだろう。
「良く生きて帰ってきた、そう思うべきなのかな」
「そう思うべきだろうな。正直何度か死を覚悟した」
メックリンガーとクレメンツ副参謀長が話している。同感だ、少なくとも俺は二度、死を覚悟した。一度目はイゼルローンで反乱軍と相対したとき、もう一度は帰還せずに反乱軍の勢力圏内に出征すると告げられた時……。
「運が良かった。幾つかの偶然が無ければ我々は此処に居なかっただろう。ヴァルハラで酒を飲んでいるところだ」
「運か……、頼りない話ですな、ケスラー参謀長」
納得がいかないのだろう、ビッテンフェルトがフンと鼻を鳴らした。
「そう言うな、ビッテンフェルト少将。どれほど能力が有っても運の悪い奴は生き残れん。我々は生き残るべくして生き残った、そう思う事だ」
ケスラー参謀長の言葉に皆が苦笑を浮かべた。アイゼナッハがビッテンフェルトの肩を叩く。ビッテン
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