半妖教師と人形遣い
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抱きついてくる人形の頭を、慧音は優しく撫でる。五体の人形は顔を合わせ合い、楽しげに笑う。
顔を上げた先、真紅の夕日が慧音たちを照らす。まだ日は落ちきっていない。ゲームは慧音の勝ちだ。
「私の負けね」
「ああ。そして私の勝ちだ」
屋根の上に上がってきたアリスが慧音の横に座る。
「約束通り講師は引き受けるわ。もっとも、魔力のこもってない普通の人形だけどね」
「それでいいさ。最初はそこからでいいんだ。まずは物を大事に思う心から育まないと」
「期待しとくわ。完成したもの、粗末に扱わないでね」
「ああ。約束するよ」
闇が近づいてくる。日は慧音たちが見ている先で沈んでいき、太陽は山のあいだへと消えていく。陽炎のごとく揺れるその姿は、酷く悲しくて優しく、心に熱を残す。
「綺麗でしょ。結構ここから見るの好きなのよね」
「ああ、綺麗だ。世界が入れ替わる瞬間か」
「その子達もあなたと見れて嬉しがってるわ」
「そうか。それなら私も嬉しいよ」
太陽が沈む。人の時間は終わりを告げ、闇が世界を包んでいく。既に月は上りその輝きが夜の到来を告げていた。
「三日月か。……そろそろ私はお暇させて貰うよ。世話になった」
「そう、残念ね。何なら止まっていけばいいのに」
「明日の準備があるのでな。人形の件は後日詳細を教える。恐らくだが、一週間ほど先になると思う」
「そう、分かったわ。それまでに準備しとく」
屋根から降り、慧音は玄関から出ていく。
振り返った先、アリスと人形たちが手を振っていた。
「気が向いたら遊びに来なさい。この子達もあなたを気に入ったようだから」
「マタナー」
「ジャアネー」
「ムネデカマタネー」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
「ふふ、そうさせてもらうよ」
そうして慧音はアリスの家を去っていった。
夜の森を歩きながら慧音は思う。今日会った友人を。そして語ってくれた夢を。
その夢がいつの日か、叶うようにと。
願わくば、その時自分がそこにいれるように、と。
夜は更けていく。
闇が、幻想郷の全てを飲み込んでいった。
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