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東方小噺
半妖教師と人形遣い
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態でも素晴らしいものだ。彼女の意思一つで思い通りの動きをする。日常生活の補助から戦闘まで。できないことを探る方が難しい。そしてある程度までなら柔軟に対応できることもわかった。そもそも慧音には既に命を得ているようにさえ見える。だが、アリスは違うというのだ。

「そうね。研究者としての性かしら。自分の持てる技量が、どこまで行けるのか。そしてそれが、どんな結果を生み出せるのかを知りたいの。出来るかもしれない、ならやってみよう、ってね。そしてそれともう一つ」

 アリスが、自由に動き回る慧音の周りの人形を見る。

「その子達と、話してみたい。今のままではまだ、私の組んだ論理回路に従った動きから外れることはない。言うならば、私自身の意思と向かい合っているようなもの。他の人から見たら違うでしょうけど、どうしても私は、自分の一人相撲であるイメージが禁じえない。それじゃ嫌なのよ。
 確かな意志を持った彼女たちと会ってみたい。同じ世界を見て、同じもの知って、彼女たちがどんな言葉を話すのか、どんな感情を持つのかを。――――私は、私の子供達と話がしたい」

 それはきっとアリスの夢なのだろう。だからこそ、アリスは前へ進む。自分の子供たちに命が宿る日を信じて。

「……もっとも、その日が来るよりも早く付喪神になっちゃう子も出るかもしれないけどね」
「そうか、理解したよ。叶うといいな。私では手伝えないが、教師としても個人としても応援させてもらう」
「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいわ。嬉しいながらに一つ、隠れんぼのヒントをあげる」
「ヒント?」

 アリスは楽しそうに微笑み、指を立てて慧音に告げる。

「思い出して。私が言った言葉を。私はこの隠れんぼで、”どこに”隠れていいって言ったかしら」
「どこに、だと?」

 慧音は数時間前のことを思い出す。そう、確かあの時アリスは確か……

「隠れていいのはこの家の中、だったよな確か」
「おしい。ちょっと違うわ。勝手な思い込みは人の視野を小さくする。常識だと言い訳し、言われてもいない言葉を勝手に付け足して意味を狭めてしまう。あの子はその思い込みの外にいるわ」
「付け足す……?」

 もう一度、慧音は思い出す。その時言われた言葉をそのままに。

――隠れていい範囲は”この家”だけ

「……あ」

 気づいた慧音に、アリスは静かに笑いかけた。






 家の屋根の上。二階の窓から直接登って行くことが出来る場所。中でもなく外でもない、境界の場所。
 最後の人形は家で一番高い煙突の上に座っていた。

「ここにいたか。お前で終わりだ」
「ミツカッター」

 1と書かれた人形が慧音の胸に飛び込んでくる。

「ああ、ちゃんと見つけたぞ」

 嬉しげに
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