暁 〜小説投稿サイト〜
東方小噺
半妖教師と人形遣い
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キッチン繋がったダイニングに、人形製作の作業場。他に個室がいくつか。二階にはアリスの寝室と他に個室がいくつか。屋根裏部屋もある。それを探さなければならない。
 そして、一番大きな問題もある。

「絶対分かっててやったなあいつ。時間が長すぎると思ったんだ」

 何故か部屋が汚いのだ。数え切れないほどの本が床に散らばり、敷板を埋め尽くしている。部屋の左右には本棚があるが、何かあってそこから落ちたのだろう。それが幾部屋も。部屋によっては服が散らばていたり、良く分からない魔法陣や道具が置かれている部屋もある。
 人形の大きさでは本や服でも十分に隠れられるスペースになる。ある場所を探しているあいだに別の場所に移られでもいたらお手上げだ。なら、少しずつでも整理整頓をしながら荷物をどかしていった方が確実に探せる。アリスもこれが狙いだったのだろう。でなければ家一件分の隠れんぼだというのに日没まで(大凡5時間ほど)というのは長い。そして慧音はその狙い通り部屋を片付けながら探している。しかも几帳面な性格が災いし、そこそこ丁寧にだ。

「はぁ、次の部屋に行くか」

 脇に避けておいた本を棚に詰め直し部屋を出、ドアの目立たないところにテープを付ける。探した印だ。もし剥がれていれば中に入ったということ。このくらいしないと動かれたとき困る。
 次の部屋は物置部屋だろうか? 外開きのドアを開けた先は比較的小さな長方形の部屋で正面に小さな窓がひとつ。右には引き出しの多い壁一面のタンス、左には背の低い棚とその上に並べられたいくつもの人形だ。

「一つ一つ開けていくか。探していいってことは見て大丈夫なものしかないはずだろうしな」

 右上から順番に開けていく。糸や針などの裁縫度具に幾多もの布地。よく分からない乾燥した草。何故あるのか分からない文々。新聞のバックナンバー。ダーツの矢。手裏剣。中々にカオスなラインナップである。
 左端の方を開けようとし、鍵がかかっていることに気づく。中には妖力に近い力(恐らく魔力だろう)を感じるものもある。これは開けてはいけない場所ということだ。流石にこの中に隠れていることはないはずだ。

「一人もいない、か」

 慧音は反対側を見る。こちらは分かりやすい。棚の上に人形が並べられているだけ。十体の人形は皆髪を解かれうつむき、手を前に下ろした格好で項垂れている。天井も見るが何もない。
 後ろを向こうとし、ふと慧音の足が当たり棚が動く。いくつかの人形が、コテン、と倒れる。

「む?」

 慧音の目がふと何かを捉える。僅かな違和感。倒れた人形のうちの一つを手に取り、じっくりと見る。胸元を隠されるように交差されていた腕をどかし、ひょい、と慧音は人形の服の上部を少しだけ裏返す。

「ここにいたか。見つけたぞ」
「ミツカ
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