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東方小噺
半妖教師と人形遣い
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 どこの誰だったかは忘れたが「本は『止まった時間』の象徴であり、知の歴史」だと言ったものがいる。
 歴史とは決して止めることかなわぬ時の軌跡であり、本とは繋がっているはずのそれを区切り不変の文字として留めたもの。学術であれ文学であれ娯楽であれ、それを記した者が積み重ねた歴史の流れを崩しただの情報として均一化された物だから。読者が受け取るのはその時点、その瞬間までを封じられたものであり、決して中身が変わることはない。歴史はなくなり、その瞬間は永遠の不変となる。ただ、読んだものの時が流れるだけだ、と。

 あの時はそういう見方もあるのだと納得した。そしてもしそれが正しいのであれ、今自分がいるこの空間は正しく、時を止められた知の宝庫であろう。――いや、残骸、というべきだろうか。
 歴史を編纂するもの、上白沢慧音は目の前に広がる散らばった本の山を前に、そう思った。








「失礼する。アリスはいるか」

 晴れた昼時、慧音は森の中の人形遣い、アリス・マーガトロイドの家に訪れていた。
 戸を開けた先、暖炉のあるダイニング。人形かと思ってしまいそうなほど整った美貌の眼鏡をかけた少女が真っ直ぐな金髪を揺らし、慧音を見る。何かしていたらしく椅子に座り、手には人形を持っている。

「あなたが来るなんて珍しいわね。お茶を入れるから、そこらへんに好きに座って」
「お構いなく。今日は頼みたいことがあってきたんだ」
「そう。でもいいのよ、丁度休憩するところだったから」

 森で採った葉の自作のミントのティーバッグを出し、水をポットへ入れて点火。カップを二つ出し、これまた自作のクッキーを籠に入れてテーブルへ。湧いたお湯で一端カップを温めてからお湯を捨て、それからティーバッグを入れてお湯を注いでいく。

「いい匂いだな」
「葉の蒸らしが少し足りない気がするけどね。数をこなさないと丁度いい程度がわからないわ」
「それでもさ。私などそういったことはカラっきしさ。食べる分には問題ないが、それ以外はどうもな」
「時間があるときなら教えてもいいわよ。望むならですけど」
「それはありがたい。だがそれは後にしておこう。今日は別件だ」

 慧音はカップのお茶を一口飲む。確かに香りと舌に残る味が弱い気がするが、それでも充分な味だ。湿った熱気が口の中を温めて膨らみ、落ち着いた花の香りが花に広がる。砂糖を一つ落とし、それをかき混ぜながら視線をアリスに戻す。

「人形のつくり方を教えて欲しい。可能なら、里に来てだ」
「それはまた、どうして」
「子供たちに裁縫を教えることになってな。まあその、色々あって人形を作ることになった。だから、出来るならアリスに教えて貰えれば思ったんだ」
「そう……」

 慧音に続きアリスも眼鏡を外してからカ
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