Episode 3 デリバリー始めました
翡翠の営巣
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じき無様な隠れ方だ。
――まぁ、いい。
なんともいえないため息をつくと、執事であるその男妖精は用件のみを伝える事にした。
「マル殿。 たった今、キシリア殿からの通話がはいりまして、弁当の用意が終わったので、転送を開始してほしいそうですよ」
*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*
「「コロッケェェェェェェェェェェェェェッ!!」」
南に昇った太陽が煌々と照りつける砦の中庭に、ゴブリン兵たちの声が唱和する。
彼等が殺到している先にあるのは、いつもの蟹クリームコロッケだ。
乳製品に目が無く、ほぼ乳製品のみで生活している彼等ゴブリンにとって、キシリア特製の蟹クリームコロッケはあって当然。
むしろなかったら暴動を起こしかねない代物である。
ちなみに蟹クリームコロッケを薬膳として簡単に分析するならば、小麦・牛乳・バターといった主成分が全て【土行】である【甘】、そのうちのバターが体をやや温める【温】の性質を持つ。
そして蟹が【水行】である【鹸(塩辛い)】であり、体を冷やす【寒】。
全体で見れば多めの【温】で【寒】を中和して、体温への影響をニュートラルに近くしているといったところか。
だが、味の五行のバランスの観点で見ると、牛乳や小麦が【土行】を高めるものの、同時に【土行】が【水行】を相殺するという、結局無駄の多い構成になる。
そこでキシリアは、このメニューに【木行】を高めるトマトと、【金行】を補う胡椒をベースにしたソースを付け合せていた。
このような技術を、【補助益生克】と呼ぶ。
――まぁ、ゴブリン達の属性が【土行】に偏っているため、全体のバランスもかなり【土行】よりになるよう調整はされているが。
「ほほぅ? これはすばらしいですなぁ」
そして、今回のメインである北京ダックをおいしそうに食べているのは、この砦の衛生兵のまとめ役であるソウテツ・カワタロウ・シバテン治療官であった。
「何がそんなにすばらしいのかね? シバテン殿」
その様子に興味を引かれたボイツェフ中隊長が思わず声をかけると、シバテン治療官は首を軽く横にふり、ボイツェフ中隊長の名前の書かれた弁当箱をそっと差し出した。
「お分かりになりませんかな? まぁ、論より証拠。 まずは食べてみなされ」
弁当箱を受け取ったボイツェフ中隊長は、まず受け取った弁当箱の外装をしげしげと眺めて首をひねる。
「ふむ……この器、魔道具ではありませぬか。 なるほど、込められた理力を利用して中の温度と湿度を一定に保つ仕掛けとは……なんとも贅沢な」
まるで貴重な薬品を管理する保存箱のような、これだけで金貨数枚の価値
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