Episode 3 デリバリー始めました
翡翠の営巣
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うに」
「ニャ!?」
驚いた声を上げるマルが何か問いかけるより早く、キシリアのせせら笑うような声と共に魔道具による通話は一方的に打ち切られた。
むろん、キシリアの目にマルの様子が実際に見えているわけではない。
キシリアの後ろにいるポメかテリアがマルの癖をチクっただけだ。
だが、言われた本人はやましい部分があるだけに平静ではいられるはずも無く……。
「キ、キシリア! ちょっと待つニャ! 何で通話機のスイッチ切れてるニャ!? 俺様とお話してプリィィィィズ! これは何かの陰謀なのじゃよぉぉぉぉぉぉ!!」
慌てて魔道具のスイッチを入れてキシリアの番号に繋ごうとするも、かえってくるのは通話不能のノイズのみ。
まぁ、実際には砦に設置されている通話用の魔道具で砦の執事にあらかじめ名簿を確認しているため、マルがいい加減な調査をしていても問題は無いのだが、キシリアはわざとマルにその事実を教えないで通話を打ち切っていた。
当然、先ほどの会話は執事から聞いたデータとマルの報告に差異がいることを承知の上での対応だ。
「ニャー! 俺が悪かったから、お願い通話に出て!! キシリア様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
これを人は自業自得と言う。
そんなマルの慌てように、最初から事情を知る兵士たちは思わず噴き出しそうになり、マルから顔を背けて必死で声を押し殺していた。
「マル殿、鼻血が出てますぞ」
おそらく笑みを堪えているのだろう。
表情が崩れてものすごい形相になったゴブリン兵士が、将来を悲観して真っ青になったマルにハンカチを差し出すが……
「にゃひぃっ! ゴメンナサイ! 蟹のエサは嫌だニャアァァァァァァァ!!」
マルは鼻水交じりの鼻血と涙を噴出しながら、脱兎を追い抜く勢いで廊下の向こうに逃げていった。
その後ろを、とうとう臨界点を突破したゴブリン兵たちの爆笑が追いかける。
残されたのは、ハンカチを手にしたまま憮然とした表情のゴブリン兵のみ。
まぁ、テンパっているところにいきなり顔を歪めたゴブリンに声をかけられれば普通はこうなるだろう。
そこへ、この砦の内向きを任されている男妖精がマルを呼びにやってきた。
「はて、マル殿はどちらに?」
執事は、目に涙を浮かべて笑い転げる兵士たちを不思議そうに眺めながら、マルの姿を探して周囲を見回す。
そして彼は、床やテーブルについた汚物を見咎めて片方の眉をピンと跳ね上げた。
「これはまた、ずいぶんとお行儀が悪いようですな」
「執事殿、マ……マル殿ならば、と、隣の部屋のサイドチェストの中に……ぷぷぷっ」
見れば、客室の半開きのサイドチェストの隙間から黒ブチの入った白い尻尾がはみ出ている。
なんとも、元怪盗にはあるま
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