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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十七話 情報部の憂鬱
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に籠りきりと言うのもいささか辛い。かといって艦橋にいては迷惑以外の何物でも無いだろう。
艦長ともなれば一国一城の主だ。そこに自分より階級が上の人間がやってくれば遣り辛いに違いない。そこで暇なときは食堂に集まって時間を潰しているのだがゼノ中佐は一日一度は此処に現れて提督に状況を報告している。律儀な男だ。
「来ているでしょうか、ベリョースカ号は」
「フェザーン商人ですからね、遅れることは無いでしょう」
巡航艦パルマはフェザーン回廊の入り口でフェザーンの独立商船ベリョースカ号と落ち合う。そして俺達はそこからはベリョースカ号でフェザーンに向かう事になっている。巡航艦パルマは我々が戻って来るまでその場で待機だ。
「信用できるとお考えですか?」
「契約は守ってくれますよ、商人は信用が第一ですから」
「信用が第一ですか……」
提督の言葉にゼノ中佐は不得要領気味な表情で頷いた。どうやらゼノ中佐は幾分困惑しているようだ。そしてそれを隠そうともしない……。
「御不自由をおかけしますがもうしばらくの御辛抱です」
「大丈夫です、不自由は感じていません。私達の事は気にしないでください、艦長」
「はっ。では小官は艦橋に戻らせていただきます」
ゼノ中佐が敬礼をすると食堂を出て行った。
「どうも中佐はフェザーン人をあまり信用してはいないようですな」
俺が問いかけると提督は微かに笑みを浮かべた。
「悪いイメージが強いですからね。主義主張もなく金儲けだけに勤しむ拝金主義者……。実際には人によると思うのですが……」
提督の言葉に皆が頷いた。だがゼノ中佐の心配はそれだけではあるまい。おそらくは俺達に対する不安も有るだろう。提督も我々も同じ亡命者ではある。しかし提督は英雄とまで評価されているが我々はそうではない。いつも何処かで裏切るのではないかと危険視されている……。
不思議なのはヴァレンシュタイン提督がその辺りを何も感じていないことだ。俺達を無防備なまでに信頼している。妙な話だ。辛辣なのに何処か抜けているところがある。だがそれも悪くない……。
「ベリョースカ号の船長は信用できるんでしょうか? 確かボリス・コーネフと言いましたか?」
「ええ、まあここまで来たら信用するしかないですね」
質問したリンツが顔を顰めると提督が笑った。皆も釣られて笑う。
巡航艦パルマに乗ってからのヴァレンシュタイン提督はごく穏やかな青年の顔を見せている。戦場で見せた厳しさや峻烈さを表に出す事は無い。時折厨房を借りて甘いものや軽い食事を作るときも有る。隊員達も最初は緊張していたが今ではリラックスして接している。
「問題は無事入国できるかどうかですが……」
「確かに。門前払いも有りうるだろうし場合によっては提督を捕えて帝国へ引き渡すことも有るで
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