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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十七話 情報部の憂鬱
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脚したのは三十年も前の事だ。自分が生まれる前の事をなんでそんなに詳しく知っているのか……」
「……調べてみたいか」
ザックスが頷きながらコーヒーを飲んだ。
「調査課の連中は皆そう言っているよ。一体どれだけの情報を持っているのか……。戦場に出して戦死でもされたら大損害だってね」
「……まあそうだな。しかし中将の用兵家としての力量は軍だけではなく同盟市民も認めるところだ。今更情報部へと言われても誰も納得しないだろう」
ザックスが顔を顰めた。
ザックスが落ち込むのも理解ができる。情報部の人間なら誰でもヴァレンシュタイン中将から情報を引き出したいと思うだろう。そして引き出した情報を分析し帝国の動向を予測したいと思うに違いない、或いはそれを基に謀略をしかけるか……。第七次イゼルローン要塞攻防戦でヴァレンシュタイン中将が行った謀略、情報部の人間にとっては羨望以外の何物でもないだろう。
だが情報部はそのどちらも出来ない。全ては中将自身が行っている。情報部の役割はそのアシストか或いは確認だけだ。頭脳ではなくあくまで手足……、ストレスが溜まる一方だろう。
「今俺が何を調べているか分かるか、バグダッシュ」
「いや、分からん」
ザックスが不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「オイゲン・リヒター、カール・ブラッケ、この二人を調べている」
オイゲン・リヒター? カール・ブラッケ? 聞いたことのない名前だ。
「何者だ、その二人は」
ザックスが今度は溜息を吐いた。
「……帝国の国政改革派と言うべき人間らしい」
「改革派?」
「その二人がブラウンシュバイク公の傍に居ないかを調べろと言われている。帝国が改革を実施するかどうかがそれで分かると」
今度は俺が溜息を吐いた。たった二人の人間を調べるだけで帝国の動向を知ることが出来る。何故そんな事を知っているのか……。そして他者からそれを告げられたザックスの気持ち……。
「それで、分かったのか」
「オイゲン・リヒター、カール・ブラッケという人物が居る事は分かった。彼らが改革派であることも確認が取れた。現状ではそこまでだ、ブラウンシュバイク公との関わりは未だ確認が取れない」
「そうか……」
「嫌になるよな」
「ザックス……」
それきり会話は途絶えた、コーヒーを飲み終えるまで……。
宇宙暦 795年 9月10日 巡航艦パルマ ワルター・フォン・シェーンコップ
「ヴァレンシュタイン提督、航海は順調です。巡航艦パルマは予定通り二日後にはフェザーン回廊の入り口に到着します」
巡航艦パルマの艦長、ゼノ中佐の報告にヴァレンシュタイン提督は無言で頷いた。
俺達は今巡航艦パルマに乗艦してフェザーンに向かっている。各自部屋を用意してもらっているのだが、部屋
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