第二章
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「違うかしら」
「どうなのかしらね」
「わからないわよね、こういうことって」
「そうよね」
「難しい質問っていうか」
「宗教とか哲学とか」
彼女も言う、困った感じの顔で。
「そんなので」
「わからない話ね」
「御免ね、急にこんなこと言って」
彼女は申し訳ない顔で私に言ってきた、今度は笑顔じゃなかった。
「変なことを言ってね」
「いや、いいから」
「いいの?」
「ええ、私もそう思うことがあるかも知れないから」
これからのことを考えるとだった、それも確かにあった。
「だからね」
「いいのねえ」
「ええ、生きるってどういうことかね」
「何なのかしらね、本当に」
彼女はまた私に言ってきた。
「よくわからないわよね」
「ただ食べたり息をしたりしているだけじゃないことはまちがいないし」
このことはそうだろうと思った、私にしても彼女にしても。
そしてだった、今は二人で屋上から景色を見ていた、それも生きているということなのかもと考えながら。
この日はこれで終わってそれからもだった。 私達は普通の日常を過ごして屋上でこの話をしたことも忘れていた、けれど。
何ヶ月あら経ってからだ、彼女は私に学校の廊下の隅で悲しい顔で言って来た。
「親戚のお姉ちゃんが死んだの」
「叔母さんが?」
「そうなの、お母さんの妹で兄弟で一番年下でまだ三十にもなっていなかったのに」
それでもだったというのだ。
「死んじゃったの」
「三十にもなっていないのに?」
「そうなの」
こう私に話してくる、暗い悲しい顔で俯いて。
「交通事故でね」
「急に死んだのね」
「三日前に会った時は元気だったのよ」
それが事故で急にだったというのだ。
「それが、昨日ね」
「事故、ね」
「そう、横断歩道を青信号の時に歩いていたら」
「それじゃあその人悪くないわよね」
「そうでしょ。彼氏とのデートの待ち合わせ場所に行く時にね」
それがどういった時かはわかった、楽しくてうきうきとしていた時にだというのだ。
「急に来た居眠り運転のトラックに撥ねられた」
「酷い話ね」
「でしょ?本当に即死だったのよ」
悲しい顔のまま私に話していく。
「もうすぐ結婚することになっていたのに」
「その相手の人と」
「凄く綺麗で優しい人だったのに」
それでもだったと、私にも話すのだった。
「そんな事故で死んで」
「あんたにもよくしてくれた人だったのね」
「凄くね。それがね」
「死んだの」
「何なのかしらね」
俯いたまま、私に話してくる。
「若くて綺麗で優しい人だったのに」
「それにもうすぐ結婚する筈だったのに」
「幸せになる筈だったのよ」
言ってもどうにもならないことはわかっているのはよくわかった、私から
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