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人狼と雷狼竜
誓いの言葉
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フは首を傾げた。
 頭には小さな黒いシルクハットが付いたカチューシャ。
 白いシャツに、黒いワンピースのよううな上下セットの衣装。
 スカートの丈は前がミニで後ろがロングという変わったもので、その一つ一つが虫の羽のような独特の形状をしている。
 腕にも長い手袋のような手甲が付けられており、脚にはニーソックスなのかストッキングなのかよくわからない物を着ており、先の尖った革靴を履いている。
 その両手にはコルヌ・ワーガと呼ばれる二刀一対の、湾曲した刀が握られている。峰には棘がビッシリと並んでおり、まるで甲虫の持つ鋏型の角のようだった。
 虫から採られた素材で作られた武器と服は何処かミスマッチしている。
「……その格好で戦うのか?」
「心外ね。コレはちゃんとした鎧でもり、パーティードレスにも使えるお得な物。見た目で判断しないで」
 以前言った事のある言葉を返されてぐうの音も出ないヴォルフに、小冬はニヤリと挑発的な笑顔を見せる。
「そうだな。ならば存分に魅せてみるがいい」
 小冬はヴォルフの言葉が意外だったのか、目をパチクリとするがすぐに元の笑顔を浮かべた。
「フン。メロメロになっても知らないわよ」
「ちょっ!? 小冬!?」
 小冬の発言に神無は慌てて何かを言おうとしたが、彼女は何を言うべきか定まっていない。
 ここだけの話。神無は見た目も華やかな小冬や夏空の物と違って、実用一辺倒の装備を選んでしまった事を今になって失敗したかと思っていた。
「それで狩れなければ意味は無い。俺としては神無のような保守的な物の方が良いと思うがな」
 と、そこでヴォルフの思わぬ発言に頭の中が真っ白になった。ヴォルフは防御を固めろと言ったのだが、神無は自分の服の方が好みだと言ったように聞こえたのだ。
「……」
 顔を赤くして沈黙する神無を他所に、夏空と小冬はヴォルフに抗議していた。
「当たらなければ良い」
「そうです。避ければいいんです」
「次でやってみる事だ」
 ヴォルフは溜息混じりに言った。
「話は終わったかな?」
 と、加工屋の老人が言う。その手にはいつもの大きなハンマーではなく大きな桐箱が乗っていた。
「これをお主に」
 老人はそう言って桐箱を開けた。
「これは……ナルガクルガの鱗か」
 ヴォルフはその箱の中身に僅かに目を見開いた。神無達からも驚きの声が上がる。
 刃渡り十五センチ程の、肉厚で両刃の黒光する刀身。大きい柄尻を除けば片手に丁度収まる程度の細長い柄。柄尻は紐などを通す為にリング状になっており、その穴はヴォルフの親指でも余裕で通りそうなほど大きい。
 それは、苦無(くない)と呼ばれる短剣だった。同じ形状をした物が三本、布張りの箱の中に収められている。
「昔、この村でハンターをやっとったモンがワシに作らせた
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