暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン〜性別不詳の槍術士〜
4.本当のスタート
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後
「す、すいません。あんなに泣いちゃって」

「構わないさ。流石に驚いたけどね」

 あの後、涙が収まった彼女――シリカと名乗っていたが――を連れてレストランへと向い、遅い夕食を取っていた。

 眠気は、先ほどの出来事に驚いたようですっかり息を潜めている。代わりに空腹感が我慢できないほどの存在感を表してきたが、幸いにもお腹の声の再現前に食事にありつけた。

 ……いや、俺も変だとは思うよ。ここで食べて満腹になるなんて。でもどうしてこうなってるのかなんて調べられないんだし、受け入れるしかないじゃないか。

 この世界の不思議については考えを強引に打ち切り、今後のことについての話し合いを始めることとしよう。

 だから、俺は真剣なまなざしをシリカ嬢に向けた。

「本当に、いいのかい?」

「はい。私も連れて行ってください」

 シリカ嬢と共に行動すること。それ自体は彼女の涙を見たときに覚悟はした。けれども、ここまで積極的に来るとは予想していなかった。まぁ確かに、仲間がいたほうが一人でいるよりも安全でやり易くもあるだろう。

 けれでも、それで良いのかとも考えてしまう。この空気に流されているのでは、場当たり的な考えなのではと。

「誰かといた方が心強いですし、何より女の子同士の方が落ち着きますから」

 そんな考えを知ってか知らずか、シリカ嬢の返答はありきたりでも、綺麗な表情をしていた。何かが吹っ切れたかのような清清しい笑顔。やけくそや場の流れに押されている訳ではない本心からの言葉と分かる一言。

 自分の考えは杞憂だったようだ。これなら安心し、あんしん?

 ……あれ?何かおかしいな。とてもおかしいな。先ほど誰が女の子と言っていたんだ?ここに女の子は一人しか、いや、そもそも話し合っているのは二人しか。

「ち、ちょっと聞き取れなかったらしい。えっと、女の子?だ、誰が」

「……あれ?」

 なんだろう。いまものすごい情報の齟齬と言うか、ひどい誤解が見つかったのだけど。

 いや、分かるよ?現実でも間違えられたことがあるからね。ナンパに出会ったときは本気で殴り倒そうかと思ったけど。で、でも今使ってるのはアバターだから俺の作った何処からどう見ても男にしか見えない、ってぇ!

「そういえばあの時リアルの顔になってたんだよね……」

「い!いきなり落ち込んでどうしました!?」

「いや、運命というかリアルラックの低さに嘆いているだけだよ」

 まずは説明と言うか、俺が男だと言うことを彼女に教えなきゃいけないんだよね。気の重さよりも心の痛みのほうが断然きつい。そんなことをテーブルに突っ伏しながら考えるのだった。



・・・・・・NOWLOADING・・・・・・  




[8]前話 前書き [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ