第一章 土くれのフーケ
第五話 考察とフラグ
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切な妹なんだな」
「ええ、とても」
ロングビルの顔にふっと浮かんだ笑みを見た士郎が、開いた口元から言葉をこぼす。
「……綺麗だ」
「えっ」
びくりと身体を震わせたロングビルが、慌てた様子で士郎を仰ぎ見る。
「あなたの妹が羨ましいな。こんな綺麗な姉がいて」
「そっ、そんな、お、おだてても何もでませんよ」
と、突然何を言っているんだいこの男は―――ッ?!
ロングビルがぶんぶんと顔を左右に振って否定するのを見た士郎は、柔らかな笑みを浮かべて同じように顔を左右に振った。
「おだててなんかいない。本当に、本心から綺麗だと感じたから言ったまでだ」
真剣な目でどこまでも真っ直ぐに見つめてくる士郎に、ロングビルは顔を真っ赤にさせながら俯いた。
「っ、っう、くぅ……」
そっそんな顔して言うもんじゃ無いだろ。まっ全く、何て顔で笑うんだよ、見てるこっちが恥ずかしいよ……。
「っ! あ、そ、その、ミスタ・シロウ。こ、ここまででいいですから。ありがとうございました」
「あ―――ちょっと待ってくれ」
いつの間にか目的地の近くまでたどり着いたロングビルは、真っ赤な顔で早口に言って、士郎が持っている本を受け取って行こうとしたが、以前の様に足を止めてしまった。
「学院長の部屋はどこにあるんだ?」
「がっ、学院長の部屋は本塔の最上階ですっ。そっ、それでは私はこれでっ―――!」
それだけ言って逃げる様にロングビルは去っていくのを士郎は、その鷹の様な目を微かに光らせて見送った。
ロングビル……か、学院長の秘書だというが、あの身のこなし―――只の秘書とは思えないが……。
去って行くロングビルを見つめる士郎。
一応注意はしておくか?
―――しかし、あの時の彼女は本当に―――。
ロングビルの後ろ姿が見えなくなるまで見送った後、再び歩き始めた士郎だったが、妹のことを話した際のロングビルの様子を思い出すと思わずピタリと足を止めてしまった。足元に差す西日に誘われるように顔を上げた士郎は、窓の向こうに見える茜色に変わり始めた太陽に視線を向けると。
「―――綺麗、だな」
―――柔らかく、頬を緩めた。
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