黄巾の章
第11話 「忝(かたじけな)い……」
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荷台に仕掛けをした後、わざと矢傷を付けたり火であぶったりな。
兵には悪いが、お互い殴ったり薄く斬ったりして傷をつけた者もいる。
「どうやって砦を落としたのだ?」
「トロイの木馬……は知らないか。まあ簡単に言えば荷台と箱に偽装しまして。箱に二人、荷車に一人隠れられる場所を作りました。突貫工事でしたけど、ばれなくて何よりですよ」
「そうか……砦内に現れた部隊というのはそれか。輜重隊だけに気を配っていたのがまずかったか」
「普通は怪しい人物がそこにいれば、それ以外は疑わなくなるものですよ。ましてや糧食や武器は本物ですしね。あとは、その将であるはずの俺が砦の外にでれば、ほかの警戒の目も薄くなりますから」
「ずいぶんと自分の武と策に自信があるようだな。私が砦に入れずに糧食や武器だけ砦にいれていたらどうしたのかね」
「そのときは戦いましたよ。あの時、官の部隊は完全には撤収していなかったので、戦い始めれば霞の部隊が戻ってきて将軍を人質にするつもりでしたし。糧食が足りないだろうことはわかっていたので、荷車だけ中に入れた後なら、そこに潜んだ部隊が撹乱させるように指示も出していましたからね」
あのときの行動方針としては、阿・伊・宇という三つの作戦案があった。
阿は、今回の通りトロイの木馬。
伊は、俺一人で砦へ潜入して破壊工作。
宇は、矢をエアバーストとアイスキャッスルで防ぎつつ、柵をぶち壊しての力業。
これらは、上から順番に被害を押さえる順として立てられている。
一番、こちらの被害が出ない方法を取ったに過ぎない。
いくら砦が難攻不落といっても、所詮は木と土で作られた砦だ。
被害度外視なら、砦を落とす方法などいくらでもある。
「まあ敵味方ともに被害を抑えるなら一番の方法と思ったんですよ。最上は将軍を人質にして降伏させる、なんですけど……黄巾の首魁ならともかく、将軍では失礼ながらどれほど効果があるかわからなかったもので」
「ふ……言ってくれるな」
「まあ黄巾の兵に関しては、民を殺戮しているゆえにあまり手心を加える気はなかったんですが……唐周の言葉でちょっと観方が変わりましてね」
「副官が?」
「ええ……信用させることを言った手前、心苦しかったのですがね。最初、こちらを疑っていることはよくわかっていたのですが、自分で納得したらこちらを気遣うように言ってきました。人の心が残っているなら、説得に応じるかなと考え直しまして」
「…………」
「本来はこの後、糧食が尽きて飢えて突撃してくるなら殺し尽くす。降伏するならば将軍以下主だった者はさらし首、の予定だったんですが……その前に降伏勧告することにしました。全員助命することは官軍の総大将の霞――張遼には了承させています」
「張遼……たしか董卓軍の武将だった
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