黄巾の章
第11話 「忝(かたじけな)い……」
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将軍は……?」
俺が問いかけると、将軍は全てを諦めた顔で笑った。
「俺は官軍に突撃する。一人でも道連れにしてやるさ……ふふ、ふはははは!」
将軍が突然笑い出す。
周囲は何事か、狂ったかと目を見開いた。
「ははは……何故だろうな。昨日まではあんなに俺を嵌めた官軍ども……宦官やその配下の官軍に恨みや憎しみに溢れていたのに。今はただ、何も感じない。自分の分というものがよくわかったんだろうな……所詮俺は人の上に立つべきものじゃなかったんだ」
将軍はすでに死を覚悟している。
俺も、その場にいたほかの仲間もそう思った。
「賄賂しか求めない公の人間。喰うためだけにしか動かない市勢の人間……この世はなんとくだらないことか。こんな世に生まれた俺は、ただ馬鹿をやって馬鹿のように死ぬ、か。ふふ……ならばそれもまたよし」
将軍は、笑いながら俺たちを見渡した。
「お前達は命を粗末にするな。砦に死体がなかったことからも、捕虜は受け入れているだろう。お前達は……」
「俺は将軍に付いて行きます」
将軍の言葉を遮るように発せられる言葉。
誰だ?
……俺か。
はは、俺だ。
思わず口に出ちまった。
死ぬつもりなんてなかったんだけどなあ……
「お前……」
「将軍だけいい格好はしないでくださいよ。俺たちだって喰うためとはいえ立派な黄巾の一員です。ならば最後までお供させていただきますよ」
「お前だけ格好いいこというなよ。将軍、俺も行きます」
「俺だって行きますよ。どうせ黄巾やめたら喰っていく方法なんてないし」
「死ぬなら将軍のように格好よくいきたいしな」
「おまえら……」
将軍が、唖然とした顔でこちらを見る。
俺の周囲にいるのは五十名弱。
他の連中は遠巻きに見ているようだ。
所詮は、食い詰め者の集まり。
五十名集まっただけでも御の字だろう。
「……ふっ。馬鹿どもが、一緒に行くか」
「「「応っ!」」」
俺たちがそう応えたとき。
「あ〜……もったいないな」
一人の男の声が聞こえた。
誰だ?
「……お前は」
「どうも、将軍」
そこにいたのは、郷循だった……
―― 盾二 side ――
「どうも、将軍」
俺がぺこっ、と頭を下げる。
周囲の黄巾兵は、それぞれ槍や剣を構える。
それを馬元義が、手で制した。
「郷循……生きていたのか」
「すいません。あれは俺の仕業ですから」
くいっ、と首だけで砦を指す。
それだけで馬元義は、得心したようだ。
「やはり間者だったのか……」
「まあ、初歩の初歩ですね。埋服の計ってやつです。工夫は凝らしましたけど」
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