黄巾の章
第11話 「忝(かたじけな)い……」
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えるようになったら私は砦へと戻る。ここには三千ほど残して山頂を取られないように奮闘せよ」
「はっ!」
恐らく奴らは砦を盾にこちらを攻撃してくるだろうか……
―― ??? side ――
この部隊も終わりか。
俺は名もなき黄巾の兵として、馬元義という将軍と共にいる。
この将軍、おっさんくさい、ざんばら頭の髭面だが、それなりに人のよいところはある。
個人的にはいい人だとは思っている。
最近では、やたらと官の悪口ばかりで、辟易もしていたが……
あれから日が昇り、煙に巻かれているとはいえ視界が多少見えるようになった後。
皆、片手に水をしみこませた布で口元を覆いながら山の裏手へと歩いている。
しばらくすると風の通りが変わり、麓からの白い煙が来なくなった。
だが、布は口元から離せない。
それは砦から昇る黒煙のせいだ。
「……焼き尽くされたのか」
将軍が、呆然とした顔で呟く。
将軍の気持ちもわかる。
普通なら砦を占拠して、防備を固めるだろう。
この砦は下には強いが、上には無防備だ。
だから奴らが占拠してくれれば、取り返す方法がなかったわけでもない。
しかも相手に陥落された直後なら、砦としての機能も大して働かないと踏んでいたのかもしれない。
だが、それも砦が残っていれば、の話だ。
完全に焼き尽くされ、その場には炭化した住居だったらしき物、柵だったらしき物しか残っていない。
「武器のひとかけらも、糧食の一粒もすべて焼き尽くされた、か……」
将軍は天を仰いだ。
俺でもわかる。
あとはもう……敵に突っ込んで玉砕するか、降伏するかしかない。
「将軍……山の麓に官軍の陣が。あと、細作の話では周辺の木々に綱が張られているようです」
綱……敵の罠か。
反対側の麓近辺に斥候としてでた知り合いは、落とし穴の底にあったとがった木の槍で喉を貫かれて死んだらしい。
しかも槍には糞尿が塗られていたとのこと。
糞尿が体内に入れば破傷風になる。
発病してしまえば、顔面や身体が引き攣ったまま死ぬ、と言う恐ろしい病気だ。
毒としてはかなり原始的で、かつ恐ろしい。
「下手に突撃すれば罠で全滅、か……緩々下りれば矢衾か。万策尽きた、な……」
将軍の言葉にへたへたと、周囲の仲間が膝をつく。
「将軍、戻って反対側から山を下りては……」
「煙を吸って呼吸困難になり、罠にかかって死ねと? おまけに向こうから矢を射られたら向こうは昇りの追い風。どっちにしても終わりだよ」
「…………」
「糧食も焼き尽くされて篭城すらできない。もはやこれまでだ。投降したい者、逃げる者は止めん。各々好きにしろ」
「
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