第一物語・後半-日来独立編-
第三十二章 辰の地、戦火は走る《3》
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られなかったのを確認し、すぐに応答する。
『聞こえている』
『よし、ならいい。これから順に出撃し、低空飛行のまま西貿易区域に向かえ』
『日来の者達に存在を伏せるためですか。しかし、すぐにバレると思うんですけど』
『熱探知なら幾らか潜めるけど、流魔探知やられたら普通にお仕舞いだな』
『そんなことは知ってるわ、ボケ。戦闘艦の邪魔になるからに決まってるだろうが』
『爺さんの機嫌が悪くなる前にさっさと出撃したいから、早くカウントを頼む』
整備班の者達にそう伝え、彼らは老人とは違いすぐ動いてくれた。
聴覚機器から爺さんの反抗の言葉が聞こえるが、無視してカウントの時を待つ。
先程まで吹いていた風が止み、時が止まったように思えた。
滑走路の向こう側を見ながら、
『これから出撃開始のカウントダウンを行います。本戦闘において隊長機をA1とし、量産機は右の順にA2、A3とします』
『オレってA3かよ。一番尻の方じゃねえか』
『じゃあ、変わりましょうか?』
『変えなくていい。呼び名など分かればそれでいい』
『それじゃ、今日からお前はナルシストクールガイな』
『……あ?』
『冗談だって、冗談に決まってるだろ。全く、それくらい見分けろって』
絶対に冗談ではなかった、と皆思ったが彼のためを思って口にはしなかった。
戸惑いながらも、
『カウント開始してもいいですか?』
『すまない、開始してくれ』
『了解。それでは加速機を噴かし、十秒前』
唸りを強くし、前屈みに身を倒す。
九、八、七、六、五と数え、零に近付くにつれ加速機の出力を上げて行く。
隊長機の騎神が右手を前に出し、機体を支えるように前に出した手の指を全て下に向ける。
この方が彼にしてみればバランスを取り易く、クラウチングスタートのようで出撃し易いからだ。
『四、三、二、一、零――!』
と同時に、加速機を爆発させる勢いで隊長機が行った。
滑走路を高速で行き、翼状の腰装着型加速機を少し開き更に加速する。
追いかけるように二機の量産機が続き、その二機も同じ動作を行う。
流魔光によって出来た青の軌跡が三本現れ、中央を先頭にし飛翔した。
辺りには、騎神の加速機による音だけが響いていた。
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