14 「★★★★『女王リオレイアの狩猟』」
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のか、それは彼女の矜持に掛けて言えない。
がやがやした集会浴場では集まった野次馬達も次第に解散してゆき、5分もしないうちにそこはいつも通りの日常の風景に戻った。リーゼもオディルの見舞いに向かい去る。
あとには横たわったカエンヌだけが残った。
「……くそっ」
ダンッ
苦々しい表情で拳を握り締めると、床に叩きつける。
目に浮かぶのは、前に立つ自分を無視して、瀕死になりつつも最後の意地とばかりにオディルに火打石攻撃を仕掛けるクルペッコの姿。声真似で召喚されていたラングロトラに気を取られていた彼女は、辛うじて直撃はまぬがれたものの肩の骨を折った上ひどい火傷を負った。その上、直後無防備な彼女にラングロトラの回転引っかきが直撃したのだ。
そしてカエンヌは彼女の体を抱えて逃げ帰ってきた。応急処置を施した後もベースキャンプの固いベッドで痛みに呻く彼女の声が忘れられない。
(しかも…)
本当に許せないのは、彼女を守りきれなかったカエンヌ自身だ。その後オディルの懇願に負けて、彼女が敢えて囮になっている間クルペッコに集中攻撃を仕掛け、結局討ち取ったわけだが、カエンヌにもっと力があれば、大怪我を負った彼女にそんな危ない役割をさせることもなかったはずだ。オディルを守れるくらい、もっと大きな――
そう、
たとえばナギのような。
オディルの体調を気にしながらの帰還に、普段より時間をかけながら悶々としていたカエンヌが、帰って早々初めて顔を合わせたナギに喧嘩を売ったのも、彼のその飄々とした態度と村人達の彼の実力に対する信頼の瞳(なにやら自分の居ぬ間にリーゼとエリザをリオレイアから救ってくれたらしい。そこは素直に感謝するが)があったからだ。
つまり何が言いたいかって、八つ当たり。それも、見たところ自分より年下の男に。
(おまけに体よくあしらわれて『暫くおとなしくしておいた方がいいな』だと?)
自分の強さを過信していたわけじゃない。だが、明らかに自分より細身の、背も平均は超えるだろうが自分よりかは低い、年下の男に、ここまで易易とやられたのには、カエンヌの矜持が傷ついた。
防具が有る無しの重みで素早さがどうとか、言い訳もできない。叩きつけられた時レウスメイルを伝った衝撃に、不覚にも一瞬カエンヌは意識を飛ばした。寝転がっている今もジンジンと響く痛みは、正しく彼の言ったとおり、“暫くおとなしく”なっている状態だ。下手な大型モンスターよりも強い衝撃だった。
「くそっ!」
ダンッ!
再び強く床を殴りつけると、装飾の溝に皮を切ったのか、血が流れた。
――もっと力を付けなくては。
その為にはまず“経験”だ。それが一番手っ取り早い。あの男に一泡吹かせてやりたかった。
カエンヌは立ち上がると床に置い
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