14 「★★★★『女王リオレイアの狩猟』」
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ひらに叩いた。
「準備はいいかい、優男のお兄さん」
「ああ」
「それじゃ早速……ぅらァ!!」
ドンッと床を蹴り大きく踏み出し距離を詰め、高身長から繰り出される大剣使いの拳の一撃は、当たれば人間の骨程度たやすく折れるだろう。
――当たれば、の話であるが。
“影でさえ追いつけない”とも謳われる速さと機動力を持つ迅竜を従えるナギに、たかが人間の――それも上位やG級ならまだしも、まだ“下級”の――ハンター如きの動きが見切れぬ筈がない。重心を右に移動して最小限の動きでそれを回避した。
勢い止まらずそのまま肩にタックルしてくる形となったカエンヌの、ちょうど全体重の乗っている右の軸足を払う。と同時に彼の胸に自身の肩を滑り込ませ、浮いた足をこれでもかと勢いよく振り上げた。
必然、頭から床に突っ込んだカエンヌは、その一連の動きについていけない。ただ、体に響いた痛みにうめいた。
野次馬には何が起きたのかすら分からなかった。カエンヌがあっという間にナギに迫り殴りかかった、と思ったら、瞬きの後には何故か殴られた筈のナギは最初の位置から一歩も動かず、ただ足元に転がっているカエンヌを悠然と見下ろしていた。
「暫くおとなしくしておいた方がいいな」
言い捨て、太刀を拾い上げてそのまま去っていくナギ。圧倒的だった。
勝者が去り、誰もが唖然とする中、唯一ギルドマネージャーだけはいつもの定位置で酒を飲みながら、「ひょっひょっ」と笑っていた。シワと伸びた眉の奥に見え隠れする金色の目がきらりと光る。
「やったぁ、臨時収入っ! えへっ」
リーゼロッテはギルド職員から何倍にも膨れ上がった重い巾着袋を受け取りホクホク顔で、ひとりガッツポーズをした。
「ちょっと、リーゼちゃん!」
「あ、カミラおばさん」
「なんだいあの黒髪の彼! ひょろっちいと思ったら、随分強いんだねえ! おまけに顔も良いし! 700ゼニー損しちゃった」
“損しちゃった”、なんて言いつつも恋する乙女のようにうっとりと手を組む恰幅の良いおばさんは、くわっとリーゼに向き直ると「いいかい」と力強く言った。
「絶対に逃しちゃいけないよ。ああいう男は案外押しに弱かったりするんだ。いっそのこと押し倒して既成事実――」
「ちょ、おばさんっ!!」
「ああごめんごめん、まだリーゼには早かったね。ウフ。兎に角、あんな優良物件そうそうないから、私みたいに嫁ぎ遅れる前にさっさと手に入れとくんだよ! 師匠と弟子だっけ? いけるいける、シチュエーション的に全然いける!!」
「……ぁう……」
にやにやしながら笑うミーハーな雑貨屋店主、名をカミラ・バルテン。夢見る30代独身、自称「永遠の17歳。うふっ」。30代の前半なのか後半なのかひょっとして40に差し掛かっている
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