ALO編
episode4 悟る真理の一角2
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礼致します」
行儀よく一礼して玄関をくぐった牡丹さんが、靴を脱いで家へと上がる。と同時に、両手に大事そうに抱えている可愛らしい丸型のヘルメットを靴箱の上に置く。ということは。
「……その格好のまま、電スクで来たんですか?」
「何か問題がございますでしょうか?」
大有りです、と言いたい。
というのも、彼女は四神守の屋敷にいたときと一切変わらない着物にエプロン姿。それでも大分アウトだろうが、これが某東京の一地域をはじめ全国で一部のお友達共に大人気の例のあの服装だったなら、ここらがちょっとした騒ぎになりかねんぞ。牡丹さん凛々しい系の美人だし。
「……では、昼食を御作り致します。十分ほどで出来ますのでコーヒーでもお飲みになりながら少々お待ちください。朱春様が淹れて、私に持たせてくださいました。あと、「体調に気をつけて」と、言伝を頼まれました」
「……ありがとうございます」
すらすらと口にした後、ちらりと部屋を見やって、勝手知ったる様子で台所へと向かう。
ちなみに俺が家を追い出されて以来、殆ど毎日牡丹さんが昼に食事を作りに来る……いや、来ていただいている……いやいや、来られているせいで、もうそこは完全に彼女使用にカスタマイズされており、とても一人暮らしの男の家とは思えないものになってしまっていた。
そう、一人暮らし。
俺としては母さんと二人で家を出たかったのだが、それは爺さんの命令で罷り通らず。
その代わりというかなんというか、俺の家には牡丹さんが来るようになったのだった。
◆
(なーに考えてんだろうなあ……)
コーヒーに口を付けながら、エプロン着の後ろ姿を見やる。一言も発さずに黙々と作業をこなし、台所……そしてさして広くは無いこの部屋まで響く包丁の音は、軽やかで美しいリズムを刻んでいる。流石は『お手伝いさん』なる職業人だけあり、家事スキルは一通り抑えてあるらしい。
毎日のようにやってきて作ってくれる料理はレパートリーも豊富で栄養面も見栄えも申し分なく、世の一人暮らしの男性諸君からしたらこの上ない贅沢だろう。通い妻、という単語が脳裏をよぎるが、無視を決め込んでおくとこに、俺は初日から決めていた。
深く考えてはいけない。
というか、考えなければならないことはもっと他にある。
(誰に命令されてんのやら……)
彼女の行動。
そこには必ず、誰かの意図が絡んでいるはずなのだ。
―――それについては、お答えできません。
牡丹さんは、最初に来た日、誰の指示かと聞いた俺にそう言った。「体を気遣ってやってくれ」との指示……というか、お願いをしたのは母さんだということは話してくれたが、ここに来た理由を
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