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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第四話 暗闇に響く咆哮
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声が震えてしまう。
精鋭の象徴である胸甲を着けた敵騎兵は、俺に向かって突撃してきた。
「畜生!頭狙いか!
尖兵はどうにかして側面に!鋭兵は砲を守ってくれ!」
 短銃を抜き、先頭の騎兵を撃つ。
 ――倒れない?畜生ッ遠いか!?
一瞬焦ったが騎兵は一拍おいて胸を押さえ、悶絶しながら落馬した。
震える手で玉薬を火皿に注ぎながら叫ぶ。
「散弾の再装填はまだか?」

「間に合いません! 」 
冬野曹長が吠えるように応えた。射角の調整もこう暗くては手間取ってしまうか。

「我々が!」
 杉谷少尉が素早く鋭兵を展開していた。 そして側面には俊足の尖兵達が施条銃を構えている。

五十発以上の弾丸によって騎兵は全滅した。

 ――銃兵達が上手く動いてくれて助かった。

 俺が気を緩めた、その時だった。 
「大尉!」
 誰が叫んだのかは分らなかったがその意味は直ぐに分かった。
「痛っ・・・」
 俺の左腕に激痛が走ったからだ。
 俺が撃った騎兵だろうか、騎銃を構えている。

「糞ッ・・・」
 ――拳銃の輪胴を回し、敵を狙い、撃つ。
 敵は首を撃ち抜かれ血と骨片を撒き散らした。
 念の為に鋭剣を抜いて屍体を改める、屍体は胸甲騎兵だった。胸甲にヒビがはいっている。
 ――気絶でもしていればいいのに、無駄に仕事熱心な騎士様だ。
 気が抜けた所為か視界が揺らぎ、慌てて止血の用意をする。
「中隊長殿!」
 冬野曹長が駆け寄ってくるのを確認し、負傷の具合を看る。
 二の腕から血が流れている、肉が抉られており、出血も割と激しい
 ――よし、動くな、止血をすれば問題無い。
 まともに当たると骨ごと粉砕される、外れただけまだ運が良い。
「大丈夫だ、生きてるよ、止血を頼む。 
 ――それと導術を呼んでくれ、中隊長と呼ばれるのはもうお仕舞いだ。」
 倒れ込みたいところだったが、倍増した責務がそれを許さなかった。
 ――本当に危なかった、半分趣味とは言え、輪胴(リボルバー)式短銃を、蓬羽に作らせたのは正解だった、連射はまだ無理だが、輪胴を回すだけで撃てるのは一発ごとに装填するよりは遥かに便利だ。
「部隊の撤退状況は?」
 疲労困憊している導術分隊長が答える
「はっ・・・どうやら負傷者を救助していたらしく手間どっていますが、現在此方に向かっています。」
 そう言いながらも少し体を揺らしている――導術兵達も限界だった。
「よくやった、君達も一度開念寺まで後退し、休んでくれ。」
 第一中隊、第三中隊はどうなっている? どの程度統制がとれている?
 疑問を飲み込み、輜重隊の待つ開念寺まで下がらせた。
 ――主力が叩かれた、と言う事は――そういう事なのだろうな、第二中隊の救援が間に合わなかったか。
「杉谷少尉・兵藤
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