第一部北領戦役
第四話 暗闇に響く咆哮
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将校が僕の前に飛び出してきた、銃を再び叩きつけ首を叩き折る。
――だが、抜けない――抜けない!
口から妙な唸り声がでるが、屍体は新城の施条銃の銃把を銜えこんだままであった。
千早の唸り声が聞こえ、――頭が一気に冷えた。
――僕は何をしていたのだ。腰には鋭剣と短銃がぶら下がっているし、千早もいるじゃないか。
馬鹿げた様を晒し終えると猪口曹長が駆け寄ってきた。
「大隊本部は?」
「全滅です!大隊長殿も戦死なさいました。」
「――成程、指揮権は馬堂大尉に移ったか。
青色燭燐弾も上がった、負傷者を救出し急ぎ撤退する。」
指示を出しながらも先程の騎兵達が脳裏にこびりつく。
――新たな大隊指揮官は無事だろうか? 騎兵と殴り合う程馬鹿ではないはずだが――
同日 午前第二刻
集成中隊 中隊長 馬堂豊久
「中隊長殿! 集結していた主力が斉射を受けています!!
大隊本部が!本部が!」
導術分隊長が悲鳴の如く声を上げる。
「落ち着け。 順序正しく話してみな。」
幸いと言うべきか、俺は他人が焦ると自分はかえって落ち着く質だ。
これで少なくとも将校の見栄は保っていられる。
「後方から、大部隊が、追いつきました、――集結した、大隊主力が、攻撃を受け、潰乱しています。
大隊本部は――攻勢の先頭に立っていた様です。」
確かめるように途切れがちに告げられた報せは俺が半ば予想していた通りの内容だった。
――あぁそうかやはり、大隊長は、失敗したのか? いや、覚悟していたのだろうな、少佐は。
首を振って現実に戻る
――否、感傷に浸る贅沢は後だ。撤退の指揮をとらなくては。
同日 午前第二刻 側道開念寺方面
独立捜索剣虎兵第十一大隊 大隊長 馬堂豊久
「青色燭燐弾を打ち上げろ。二度打ち上げたら軽臼砲は放棄、分隊は擲射砲分隊と合流し、後退せよ。
導術分隊は今念寺の支援部隊へ連絡、早急に移動の用意を命じ、その後は、残存部隊の位置を探れ。
大隊騎兵砲小隊と集成騎兵砲小隊 鋭兵・尖兵小隊は、撤退を支援。指揮は俺がとる。」
「中隊長殿!中隊規模の騎兵が此方に向かっております!」
(おそらく)導術兵が叫び声をあげた。
――糞、退路を断つか、余程の自信があるのか。
「騎兵砲は、急いで砲撃をしろ! 再装填は近接用の散弾だ!
導術!捉えた方向を指示しろ!」
砲声が轟く騎兵砲ニ門と擲射砲一門による霰弾が敵に降り注ぐ。
次々と血を流して倒れるか落馬して踏み潰され魂を光帯の向こうへと旅立たせていくが生き残りの騎兵が青色に照らされながら此方に向かって来た。
――騎兵の胸元が青い光を反射した。
「――自信があるはずだよ、畜生。」
無理矢理笑みを貼り付けていようと、その姿を見るだけで
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