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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第四話 暗闇に響く咆哮
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握られており、彼自身も返り血を盛大に浴びている。
 
「随分と――気張ったみたいだな」
 そう言って大尉が頬を攣らせた。
 新城の姿は暗がりでなおそうさせるものがあった返り血は兎も角、壊れた銃を棍棒の様に使ったので銃床と顔に色々とこびりついていた。

「新城、俺達は発起線まで後退して退路を確保する。
君達には早急に大隊本部と合流してもらいたい、大隊長殿は前線で指揮をとっておられる。
今は敵の頭を早急に潰す必要がある、退路の維持は我々に任せてくれ」

 ――大隊長も前線に出ているのか、やはりそうした男なのだな。

「なら兵藤少尉麾下の尖兵小隊をお願いします。それに擲射砲も。
僕達は大隊主力の援護を」

「あぁ、頼む。此方も導術で情報を収集し、可能な限り支援を行う」





 本部を狙っていた中隊規模の銃兵を片付け、漸く本部の周辺にたどり着いた。
 ――流石に息が切れる。
 足を止めて後続部隊を待っているとがっしりとした影が新城に声をかけた。
「どうした!もう疲れたか!」
 ――大隊長か?まるで別人の様に溌剌としている。
 供は二人のみ引き連れているからだけではなく、その仕草はまさに騎兵将校の機敏さを感じさせるものだった。

「前衛は潰しました。退路は馬堂大尉の中隊が確保しております。」

そういうと応えるように砲弾がだいたい主力と交戦している敵の後方で炸裂した。
死人こそでないが、予想外の轟音に敵の戦列が乱れる動揺している様だ。
 ――豊久の指揮下にある擲射砲か?

「成程な、奴も気が利くな。 おい、ついでに此方も手伝え。」
 そういって大隊長が示した敵は方陣を組みかけているが、再び敵の後方に擲射砲が着弾し、不運な猟兵が鉄帽ごと頭を押潰された。
一拍おいてから霰弾が炸裂し数人が吹き飛ばされたが統制は崩れない。
 ――流石に導術兵だけでは着弾観測が難しい様である。
 ――導術を疲れさせるのはまずい、ここは僕達でなんとかしなくては。
「願ってもないことです。」

そう言うと頷いて大隊長は駆け去った





 剣虎兵大隊主力による二度の突撃は、敵を突き崩しつつあった。
まばらな擲射砲の支援は攪乱以上の意味をもたなかったが、それでも敵は態勢を整えきることができず、第二中隊も大隊主力も無視できない損害を出しているが、押し勝ちつつある。
 その時帝国軍が大量の白色燭燐弾を打ち上げた。後続部隊が追いついたのだった。
 大隊主力が斉射を浴びて次々となぎ倒され、騎兵中隊が新城達を無視して脇を駆けていく。
 ――砲を排除するつもりか。
 眼前の光景を照らす光に青が混じる――全てが崩壊しつつある中で青色燭燐弾が打ち上がったのだ。
 そして、その光に照らされながら
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