第百二十三話 拝領その十一
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「奥州を暴れ回っている伊達政宗ですな」
「独眼龍じゃな」
「はい、あの者ですが」
「噂では今は奥州におらぬらしいな」
「都、いえ堺に向かっているとか」
この話は殆どの者が知らぬが織田家では密かに知られていることなのだ。
「その様です」
「堺にのう」
「道は東海道でも中山道でも岐阜に入るかと」
「ほう、ではじゃ」
信長はここでいつもの癖を出した、伊勢の社の中で笑って言った。
「奥羽の龍とも会えるのう」
「殿、またその様なことを考えられますか」
平手は信長のその言葉に眉を顰めさせた。
「全く、何でも興味を出されて」
「会うのは駄目か」
「伊達政宗といえば相当な暴れ者でありますぞ」
平手は織田家の重臣筆頭だ、それだけに色々と見聞きして知っている。
それでこう言ったのである。
「あちこちと戦をして血も厭わぬ」
「ある城の者を撫で切りにしようとしたらしいのう」
「天下を狙うと公言しておるとか」
このことも聞いている平手だった。
「その様な者と会えば」
「隙を見せればじゃな」
「何をされるかわかったものではありませぬ」
「ははは、それはまだ大丈夫じゃ」
平手の心配はまずは一笑で返された。
「今はな」
「境を接していないからですな」
「岐阜と米沢では相当離れておるではないか」
だからだというのだ。
「織田と伊達はまだ何もない、それで暗殺もないわ」
「確かにそうですが」
「爺もわかっておるではないか」
「しかし、伊達政宗が天下を狙っているのは事実」
このことは間違いないというのだ。
「剣呑な者ですぞ」
「剣呑なら剣呑でよい」
信長はそれもまたよしとした。
「それもまた面白いではないか」
「では会われますか」
「岐阜に来ればな」
そうするというのだ。
「場を用意するか」
「全く。殿はどうしてそう何でも誰でも」
「行ったり会ったりすることがか」
「左様です、危うい者とも会われますし」
ちらりと松永も見る、今彼は大人しいが織田家の家臣の中で彼を最も警戒しているのは他ならぬ平手である。
本気で除こうと常に考えている、その松永を見ながら言うのだ。
「全く」
「ですな、確かに」
「傍に怪しい者がおるかも知れませぬ」
「そのことにはお気をつけ下さい」
「我等もお護りしますが」
平手以外の、羽柴以外の殆どの面々が松永を見る。彼への警戒の念は弱まることは決してなくそれは今もだった。
それで今度は雪斎が言ってきた。
「殿、伊勢は聖なる場所です」
「その通りじゃな」
「その聖なる場所に怪しい者を入れるのはどうかと思いますが」
「聖なるものが穢れるか」
「お言葉ながら」
彼も言いつつ松永を見やる。
「そう思いますが」
「左様、雪斎殿の仰
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