第百二十三話 拝領その十
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「丁度通るしのう」
「伊勢参りですか」
「それも為されますか」
「うむ」
このことを言うのだった。
「ついでになるからな」
「ではそのうえで」
「我等もですか」
「共に参ろうぞ」
家臣達にも言う、そしてだった。
信長は伊勢にも参った。その聖地を見回して言う。
「違うのう、ここは」
「普通の場所ではありませぬな」
「他の神社とは全く別ですな」
家臣達も言う。
「何というか神聖さが違います」
「他の場所とは全く」
「伊勢は別格じゃな」
深い、それでいて神秘的な趣きのある神社の中を見回して述べる信長だった。
「ここはな」
「伊勢は天照大神の社です」
「そして皇室の社でもありますからな」
「ここへの銭は幾らでも出す」
実際に織田家はこれまでもかなり出している。長い間寂れていたがそれを持ち直させたのも信長の功績なのだ。
「そうするぞ」
「これからもですな」
「そうしますな」
「無論じゃ。木の一本に至るまで整える」
銭を出し人も出してだ。
「宮司殿にもそうお話しておこう」
「して殿」
佐久間がその巨木のうちの一本を見ながら言ってきた。見れば優に二百年は生きているであろう立派な木である。
その木を見ながらこう言ったのである。
「その銭ですが」
「うむ、何百貫でも何千貫でも出すぞ」
「多めに用意しておきますか」
「こうしたことは思ったより多くかかるものじゃ」
「だからですな」
「そういうことじゃ。ではよいな」
「はい、さすれば」
佐久間は信長の話に頷いた、そして。
彼は今度は厩を見た、この社の中にはこうしたものもあるのだ。
その厩を見て今度はこう言ったのである。
「ここの馬、白馬ですが」
「よい馬じゃな」
「こうした馬についても」
「馬は食わねばならん」
「では馬の餌もまた」
「あらゆることに銭はかかる」
社にしろそうだというのだ。
「だからじゃ、馬もじゃ」
「とにかく何でもですな」
「そうする、だから多く用意しておくのじゃ」
「戦や政と同じですな」
「教もそうじゃ、とにかく何でも銭がかかり」
そしてだった。
「整わぬわ」
「織田家の旗は伊達ではありませぬな」
織田家の青い旗には銭が描かれている、それは伊達ではないのだ。
「そう、伊達では」
「伊達のう」
「伊達、そういえば」
今度は丹羽がふと気付いて言ってきた。
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