第百二十三話 拝領その七
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「それは」
「見ることがか」
「左様です、殿のお心もまた」
「わしもか」
「はい、そうです」
「わしの心というと」
「帝に献上されるだけでなく」
それに加えてだというのだ。
「殿は我等にも民達のいも見せて頂くので」
「わし一人で見ても面白くとも何ともないわ」
信長らしい考えである、彼は何をするにも何を見るにも自分だけが楽しむということは好きではないのだ、それでなのだ。
「だからこそじゃ」
「左様です、そのお心こそがです」
「よいというのか」
「はい」
その通りだと言う平手だった。
「そのお心、有り難く思います」
「褒めても何も出んがな」
「何かを出そうと思い言ってはいません」
「ははは、そうか」
「そうです。それでなのですが」
平手はあらためて言ってきた。
「一つ気になることがありますが」
「東大寺のことじゃな」
「東大寺には既に勘十郎様が赴かれていますが」
「補佐には新五郎達をつけてな」
そのうえでのことだというのだ。
「あ奴をこの度の奉行にした」
「やはりこの度程大事なことには」
「それなり以上の器の持ち主でなければ仕切れぬ」
信長は馬を進めながら前を見て語る。
「だから勘十郎に任せた」
「あの方しかおられませぬな」
「爺や新五郎でもよかった」
「では何故勘十郎様に」
「爺にしても新五郎にしても出せば上には誰も置けぬ」
このことが問題だというのだ。
「補佐役も出来る、それに上に勘十郎を置けばな」
「それでどうなるかですか」
「あ奴は人を使える、尚よい」
「だからあの方を奉行にされましたか」
「自身が出来るだけではなく人も使える」
その両方のことからだったのだ、信行は戦は弱いが政については信長に少しばかり引けを取る程で何事も出来るのだ。
その信行だからだというのだ。
「あ奴を奉行にしたのじゃ」
「そういうことでしたか」
「左様じゃ。東大寺も先にいあ奴を奉行として送った」
無論林や明智達もだ。
「後は無事仕切ってくれる」
「では東大寺に来た時は」
「既に全て話はついておる」
そうなっているというのだ。
「後は寺の前に行くだけじゃ」
「前と仰いましたが」
平手と共に信長の後ろにいる柴田がここで問うてきた。
「では寺には入ることは」
「ここで入るか」
信長はその柴田に問い返す。
「御主はそうするか」
「ここは兵を入れるべきではありませぬな」
攻め、戦のそれから見ての言葉だった。
柴田は鋭い顔になりそのうえで信長に答えた、これがその答えだ。
「東大寺程になりますと」
「迂闊に兵を入れてはならぬな」
「今は攻める時ではありませぬ」
もっと言えば攻める相手ではない、柴田はこのことを見極めているのだ。
「若し
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