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くらいくらい電子の森に・・・(誰も死ななかった編)
終章
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ば」
そう言って烏崎は、自嘲気味に笑った。…全く、傷の癒えていない笑いだ。直視できなくて、僕はお猪口に口をつけるふりをして俯いた。
「怖い人だよ、あの人は……切られたのはもしかして、不幸中の幸いだったのかもな」
何故か、ぞくっとした。『あの件』がこのまま加速していったなら…この人はこんな風に、場末の居酒屋で、焼酎を舐めていられただろうか?『IF』を想い、それに怯えるなんて馬鹿げている。……分かっているのに。
「どうした、小便ガマンしてんのか」
「ねえさーん、ウーロン茶と鮭茶漬け。紫芋のジェラートは少し遅めに持ってきて」
せっかく人が心配してんのにこの野郎。
「……じゃあこの件はもう、終わったんですね」
「多分な。俺はもうこの件から…ってか、『M』から降りた人間だ。詳しくは知らない」
「ふぅん。…そういや、烏崎さんは持ってないんですか、MOGMOG」
「冗談じゃねぇよ!俺はもうMOGMOG恐怖症だ、一生関わりたくねぇよ!」
「そんな大げさな」
「大げさじゃねぇよ!お前は何も知らないから、あんな恐ろしいモン使ってられるんだ」
「どこが。可愛いじゃないですか」
「だっから、お前は…ていうかMOGMOGユーザーは何も分かってないんだよ」
烏崎は、声をひそめた。
「……MOGMOGはな、お前らが思っている以上に、人間に近いものだぜ」
人間に、近い……?
「まっ、俺もよく分かってないんだ。ただ…数日間、『部外者』としてリンネと接して、思った。あいつらはプログラムだが…時々、気持ち悪くなるくらいに、人間だった」
「プログラムがそれだけ巧妙ってことじゃ、ないの?」
「そうじゃねぇ」
烏崎は、すっと目を細くした。
「あいつは俺を憎んだ」
「うそっ」
プログラムが、人を憎む…?
「ばかな。人見知り設定の、延長みたいなもんでしょ?」
「違うぜ。断言する」
ずい、と身を乗り出してきた。うっわお父さんの臭いがする。
「杉野に直接害を加えたのは、俺だ。…にも関わらず、あいつは俺以上に『ある相手』を憎んでた。誰か、分かるか」
ふるふると首を振る。知るわけないだろ。
「―――八幡だよ」
「えっ!?」
烏崎は再び指を組み、顎を乗せた。
「八幡ってほんと…優しい子だよな。杉野が泣くたび、落ち込むたび、あの子は一緒に泣いて、杉野を優しく抱きしめた。杉野も、八幡にだけは懐いていたなぁ」
当然だな。僕も思わず懐きそうになったよ。杉野も少しは胸チラ覗き込んだりしたんだろうか。…あいつがそんな男なら、少しは仲良くなれそうなんだけどな。

いや、そんなこと思ってる場合じゃない!

「八幡と杉野は、今も交流があるみたいなんだけど…ほら、あの子ああいう状況好きそうだろ。『あの人は、私がいなくちゃダメなの!』みてぇなの」
分かってんじ
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