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くらいくらい電子の森に・・・(誰も死ななかった編)
第五章
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うしていいか分からずもじもじしていると、彼は急に真面目な顔でビアンキに向き直った。
「リンネは、奴らから妙な命令を受けていた」
「妙な、命令?」
「自分と同じMOGMOGを探せって。…意味が分からない。同じMOGMOGってどういう意味なんだろう。ビアンキちゃんが、リンネと同じMOGMOGってこと?」
そうか…杉野氏は知らないんだ。自分が持っているMOGMOGが、特殊なMOGMOGだってことを。言うべきなのかどうか、迷うところだ。
「リンネは頑張ったんだ。…僕の自由と引き換えに」
自由と引き換えに、か。
ようやく、僕が拉致られた理由が見えてきた。
杉野氏を拉致した彼らにしてみれば、ひどい拒否反応を起こされて拉致せざるを得なくなったのは、事故みたいなものだったんだろう。しかも相手は、透析なしには明日の命も知れない病人。長期間監禁を続けるのは、どう考えてもまずい。だから、他のMOGMOGマスター…この場合は僕…を探し出し、人質にして口封じをした上で杉野氏を解放、そして僕からMOGMOGの情報を引き出す、という方法を思いついたのだろう。
ということは、杉野氏を解放した後にでも、何か利益をちらつかせながら交渉を持ちかけてくるはずだ。喜んで乗る振りをして、隙を見つけて逃げ出せばいい……
「――でも安心して。僕は君を一人置いて逃げたりしない!」
「……え」
「僕にはよく分かるんだ。一人は辛いものね」
「…いやその」
「一緒に、いてあげるよ」
「…えぇ〜…」
「どのみち、僕の命は残り少ない。…君のために使っても、構わない」

…いいから帰ってくれカンパネルラ!あんたが帰らないと話が進まないんだよ!

「でも!…紺野さんが心配してるから。誰かを悲しませるのは悪いことだよ。僕一人なら死ぬわけじゃないし、何とかなるから帰って欲しい。紺野さんのために」
腹芸が通じる相手とは思えないので、正論で説得してみる。
「姶良君…」
今度は涙で瞳をうるませて僕を見つめる。…よし、もう一押し。そう思った刹那、背後でかちりと音がした。びくっと首をすくめる。
「あ…起きたんですね…」
振り向いた先には、黒いスーツの若い女がいた。眼鏡のせいで地味な印象だけど、その奥の目は、切れ長なのにどこか柔らかくて綺麗だ。…月夜の湖面みたいな人だな、と思った。つまり、ちょっと見惚れた。
「ごめんなさい。…びっくりしてる、わよね」
小さくてかすれ気味だけど、細く澄んだ声をしている。都会の雑踏では掻き消えてしまいそうな、儚げな…。
「あの、ここは何処なんですか?僕は一体…」
わざと弱々しい声を作って上目遣いに見つめる。こういう場合は、後々油断を引き出すために、ちょろい印象を持たれておくに限る。
「えと…あの…」
「ぼ、僕…殺されちゃうんですか…?」
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