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くらいくらい電子の森に・・・(誰も死ななかった編)
第三章 (1)
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てくるのだ。
それでも僕の守備範囲にいるうちは、なんとか携帯で遠隔操作して正規ルートに戻せるけれど(この「柚木サルベージ」のお陰で、僕は鋼の方向感覚と呼ばれ始めた)、たまに僕もお手上げな程、遠征している場合がある。そんなときはどうするか…

放っておくのだ。

すると、嗅覚なんだか帰巣本能だか知らないが、彼女は不思議と源流にたどり着く。
「鮭と同じ原理で帰ってきているのだ」と、鬼塚先輩は言う。だとすると嗅覚のほうか。

「食べる?」
ふいにポッキーの袋を差し出されて我に返る。
「あ…ありがと」おずおずと手を伸ばす。先輩達も、のそりのそりと群がってきた。
「最近のポッキーはすげぇなぁ、柚木よ」
「なんだこのデコレーションは。ポッキー異様に太くなってんじゃねぇか」
武藤先輩が、毛の生えたごつい指を袋にねじ込んで可愛いポッキーをつまみ出し、面白くもなさそうな顔で噛みしめる。ポッキーがケダモノに汚されたような絵ヅラだ。
「文句言うなら食べないでくださいよぅ」
柚木がぷぅ、とむくれる。続いて鬼塚先輩がポッキーに手を伸ばした。
「ははは…それより柚木、鬼塚はさっき便所でチンコ触って手を洗ってないぞ」
「え!?」
柚木が、そして鬼塚先輩がびくっと肩を震わせる
「そして、俺もだ」
「キャアアァァァア!!」
柚木が飛びのいた拍子にポッキーの箱を取り落とす。
「あーあ、もったいね」
「最っ低!!もうそれいらないから!!」
「いらねぇか、ラッキー」
武藤先輩はポッキーをひょいとくわえると、床に落ちた箱をつまみあげた。


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「うめぇ!…ほれ、お前も食わんか」
「…いや、いいっす」僕は即座に断った。
「ちょっと!それ高かったんだから!ポッキー代返して下さいよ!!」
「じゃ、ポッキー返す」
「そうじゃないでしょ!!…ああぁぁもう!!最近こんなことばっかし!!」
頭をかきむしって柚木が叫ぶ。…『こんなこと』とは、紺野さんがMOGMOGを勝手にインストールした件のことを言っているのだろう。
「まぁまぁ…じゃあこれ開けようか」
僕はカバンの奥から『期間限定キノコの山 野イチゴ味』を取り出して机に置く。真っ先に手を出してきた武藤先輩を払いのけ、柚木がキノコの山を奪い取った。
「やった、いいの持ってんじゃん!これ、どっちにしようか迷ったんだよねー!」
「ははは…偶然ね…」
実は前回のサークルで、女子が「新作イチゴ菓子をみんなで持ち寄って試食しよう!」と相談していたのを立ち聞きして、あわよくば「うわっ偶然〜!僕も今持ってるんだよね!」などと、どさくさに紛れて試食に混ざりたい!と考え、用意しておいた。しかし、部屋に入って早々先輩達に捕まり、野望はあえなく潰えたのだ。

「で、これが次の
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