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くらいくらい電子の森に・・・(誰も死ななかった編)
第三章 (1)
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うに赤のラインで囲った地図が表示された。
「…ほう、ちゃんと走ってみたんだろうな。ロードバイクで未舗装の道とか、きつい坂道とかシャレにならんぞ」
「…通しで走ってはいないけど、大体」
「大体ってお前ね」
「まぁ、まてまて武藤よ」
先刻から、それとなく覗いていた鬼塚先輩が、割って入ってきた。
「よく出来てるじゃないか。俺が知る限りの厄介な道は、ほぼ迂回できている。寄り道が出来るスポットも盛り込んであって、なかなかセンスのよいコースだ。…よく、走ってないのにこれだけのものが作れたもんだ。驚いた」
「この辺の地理は、大体把握してますから」
僕は小さく笑って地図を全体表示にした。鬼塚先輩が、再度感心したように呟いた。
「…さすが『鋼の方向感覚』だな」
僕は生まれてこのかた、方向を見誤ったことがない。
小さい頃、車で30分かかるばあちゃん家に泊まりに行った日、お気に入りの絵本を家に置き忘れた。明日には帰ると分かっていたけど、なんとなくイライラしてしまい、祖母の自転車を拝借して絵本を取りに戻った。道は、完全に覚えている自信があったから。
事実、僕は一度も迷うことなく、4時間余りで往復してばあちゃん家に戻ってきた。今思い出しても、結構いいスコアだ。
…まぁ、そのあと半狂乱の母さんに半殺しにされたのだけど。
それに加えて一度通った道は、建物や造りも含めて絶対に忘れたことがない。一見凄い能力のような気がするけれど、この異常な記憶力は『道』にしか作用しない。僕の一般的な記憶力は、極めて人並みなのだ。
「なにそれ?次のコース?」
ゴテゴテしたデコレーションのイチゴポッキー(?)をくわえて、柚木が寄って来た。
「あー……まぁ…」「ふぅーん…」
柚木が、分かったような分からないような顔をして、マップを覗き込む。
間違いなく、分からないのだ。
多摩川のサイクリングロードくらいはギリギリ分かっているかもしれないが、むしろ半端に分かってしまったせいで、自分の分かってなさが分からない状態になっていることだろう。
街乗り派の合言葉に「柚木を1人で走らせるな」というのがある。
順調についてきているな、と思って一瞬目を離した隙に、何かに気をとられては、ふっといなくなるのだ。…まぁ、道を知ったうえでコースを外れているのなら、何も言うことはないんだけど、彼女は百発百中で迷子になる。
それでも発見が早ければ、割とラクに元のコースに戻せる。しかし彼女の場合、無駄に脚力がある上に、闇雲な行動力であっちこっち走り回るので、迷子が発覚した時には取り返しがつかないほど遠くに行ってしまっていることが多い。そして「なんか、変な所に出ちゃった!…んとね、十字路の先に薬屋があってね、『山梨↑10km』って書いた青い看板が…」みたいな絶望的な電話が掛かっ
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