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東方小噺
サトリ妖怪と破戒僧
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生活を送っていた。穴蔵の中に引きこもるのはいつものことだが、部屋から一歩も出ないのは珍しい。

 実のところ、私は何があったのか大体のところを理解している。とある事件が起こったことによりさとり様は心を傷つけられ、ベッドの上で布団にくるまりバタンバタンと転がる作業に没頭されている。

 事の顛末を知れば確かにそうなるのも無理はない。何か声をかけたいが、完全に自業自得な上、変に声をかけては傷口を抉るだけだ。事実、適当な言葉で慰めようとしたら「うみゅみゅミュみゃああああああ!!! ああああ!!!」と奇声をあげてバッタンバッタン転げ回られた。あれは怖かった。

「こんにちは、お邪魔します」
「はいこんにちは。精が出るねこんなちょくちょく」
「ええ。私の身内の不得手が原因でもありますので……」

 聖白蓮、と名乗った彼女はあの事件の日以来ちょくちょくここ、地霊殿へと足を運んでいる。何でも家の主がああなった理由は自分にもあるからとか。その為にカウンセリング? のような事をしに来ている。旧とかいえ地獄であるここに偉い僧が来るのもまたミスマッチだが、猫の手も借りたい状態だ。猫である私の手が無意味だった以上、ほかに頼るほかあるまい。徳の高い僧ならば少なくとも私よりはいいはず。まったくもってありがたいことだ。
 聖の目が私たちを外れ、奥へと……さとり様の私室へと向かう。

「彼女はまだ……」
「ええ。絶賛引きこもり中です。たまに奇声が上がって怖いです」
「そう……まだ、心の傷が癒えませんよね。少し、声をかけて来ます」
「ええ、お願いします。仕事もたまって来てますので是非」

 こんこん……と静かに戸を叩く聖の姿を一目見て、私はお空を連れてその場を離れる。二人にしたほうが話しやすいだろう。初めて彼女が来た日を思い出す。さとり様は彼女を見るなりジャンピングご下座を決めた後速攻部屋にこもった。あの時の「ごめんなさいごめんなさい私じゃない私じゃないんです忘れてくださいおねが、お願いしますほんとすみませんああああああ」という声が忘れられない。人のトラウマは平気な顔で暴くくせに、自分のトラウマには弱いらしい。

 私は折りたたまれた一枚の新聞を手に取り、外の庭へと出る。はあ、まったく困ったものだ。地獄の仕事自体はお空と私の二人がいれば最低限は出来るが、あくまで最低限。炉を回すだけ。他はさとり様が復帰してもらわねば。

「一体、いつになるかなぁ……」
「いつになるだろうねぇ……。そういえばさお燐、こいし様も見ないよね。どうしちゃったんだろ」
「あの人は前々からそう見る人じゃなかったけどね。まあきっと、このせいだろうね」

 手に持っている新聞に目を通す。私自身、これを見て何があったのか知ったのだ。

「ああ、確かそれ見てこいし様何か言っ
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