サトリ妖怪と破戒僧
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だが、流石に少し強すぎる。違う意味でイってしまいそうだ。
もう、捉えられるのも時間の問題だ。だが、捉えられるわけにはいかない。私は、自由を手にするのだ!!
目の前の段差を飛び越えるために、私は足に力を入れ力強く地を蹴る。
「アイキャン、フラ―――」
――ツルッ。
濡れた足が滑り、私の体が傾く。
痛そうな段差にダイブしてく者がいた。私だった。
「――ァイ、ぎ!?」
鋭い痛みと衝撃を最後に、私、こいしの意識は天へと羽ばたいていった。
「……知らない天井ね」
目が覚めて開口一番、とりあえずのお約束を私、古明地さとりは言った。
地底とは違う開放的な遠さの天井と、明るさに見てた高さ。鼻に流れ込む静謐な空気に痛む頭を思い起こせば、ここは命蓮寺だと思い出す。しかし一体何故、私はこうして布団で横になっているのだろう。
「あ、起きましたか?」
声に振り向けば毘沙門天代理、寅丸星が私を見ていた。やはりここは命蓮寺で間違いないらしい。
「体で辛い部分はありませんか?(頭大丈夫かなぁ)」
「何故か頭がガンガンと凄く痛いのだけれど」
「少し、見せてもらえますか?」
寅丸は私の頭を見てふんふんと納得したように息を漏らす。
「怪我は大丈夫ですね。多分、飲みすぎたんだと思います。どうぞ、お水です(昨日飲んだからなー)」
「ありがとう。ああ、そう言えば確か誘われたわね。そんなに私、飲んでた?」
「うーん、実は私もよく覚えてないんですよね(飲みすぎて何があったか覚えてないなぁ。何かしちゃったらしくて、罰として看病をナズーリンから言われたけど)」
「そう」
心を深く漁ればある程度の断片は拾えるだろう。だが、酔いに痛む頭でそれをする気にはなれない。まあ、どうせ知ったところで大したことではないだろう。
水を飲んで少し楽になった頭で寅丸に聞く。
「他の人たちはいるの?」
「あー……ええ、まあ。聖は朝の読経とかでちょっと居ませんが(他のみんなは飲んでたのバレて聖に怒られちゃったしなー)。あ、そうそう。その服はあげますので着て帰って貰って構わないと聖が。あなたの服はまた後日返すそうです」
「服?」
そう言われ、ふと自分の様子に気づく。来てきた服と違う。寺の僧が切るような、寒色に染められた麻布の服。意外に肌にチクチクせず、軽くて着やすい。貰えるとはまたありがたい話だ。しかし、来てきた服は一体どこへ。
「それと……」
疑問に駆られる私へ、言いづらそうに寅丸が言う。
「ナズーリンと聖からの伝言です。『起きたのなら、出来るだけ早く帰ったほうがいい。あなたのためにも』です」
「私のため?」
「ええ。何のことだか
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