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東方小噺
サトリ妖怪と破戒僧
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ろう。妹のふりをする、ということは妹の挙動や喋り方をするということ。これが意外に心に来た。絶対に黒歴史だ。もし知り合いにでも見られていたら49日は外に出られない。そもそもひょいひょい出るつもりもないし出たこともないが。決して引きこもりというわけではない。正座が辛くて泣きそうだったりとかそんなことはなかった。

 そうして観察を追え、帰ろうと思った夜中のこと。寺の幹部?というべきか、妖怪僧たちに誘われたのだ。――久しぶりに飲もう、と。
 そして今に至る。

 酒臭い部屋にやたら陽気な妖怪たち。人?がいいのはいいが、寺の僧がこれでいいのだろうか。

「(聖にはバレないでしょう。人がいいというか、疑わない人ですから。聖とものみたいなぁ……そういえば、体重を気にしていましたっけ)」
「(姐さんが気づくとかないwww人疑わないwwwそこ大好き愛してるwww酒うまいwww)」
「(私が沈めたいのは酒の海じゃなく水の底……けどいいの、我慢しちゃう。だって僧(艘)だものwww)」
「(聖にバレない様に抑えさせないと……はあ)」

 こんな始末だ。いや、ほんと人はいいのだが……いいのだが……うん。まあ、その、あれだ。一回バレたらしいのにこのザマだ。マトモなのは鼠くらいだ。
 床に転がっている酒の量も妖怪仕様。瓶の山。どこから金を捻出しているのか。というかこれに気づかない聖という僧はよほどのアホか大物か。アホはこいつらだ。
 そして私の手の中にも枡と今にも溢れそうなほど並々と注がれた日本酒が。全く、妹はいつもこんな中で飲んでいるのだろうか。

「ほら、いつもみたいに飲もうよ。静かだけど何かあった? 大丈夫、他の奴らには言わないからさ(ほら言え、言え。酒の肴にするのです)」
「いえ、大丈夫だよ。うふふ、お酒好きー」

 死にたい。何だこれ。何だ今の。そもそもこいしってこんな話し方だったっけ死にたい。私姉なのに。
 心が読めて他人の暴言には強いくせにこういったことには耐性が弱いのだ。外固めすぎて内側は弱いのだ。頼むからこれ以上傷は増やさないで欲しい。外に出られなくなる。
 
(私はこいし、私はこいし……)

 ひたすらに呟き自己暗示をかける。そうでもないとやってられないのだ。呟きながら、手に持った酒を一気に煽る。そう、なんってったって

(私は無意識を操る妖怪、古明地こいしなのだから……!!)

 喉を、灼熱の液体が流れていった。







「飲んでますかー!!」
『オー!』
「悟りたいですかー!!」
『オー!』
「聖は愛してますかー!!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
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