サトリ妖怪と破戒僧
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『文々。新聞 特別外号! 記者は見た、不思議少女の真実の姿!!
里で着々と信徒を増やしている命蓮寺。妖怪にも人にも優しいと評判の寺で事件が起こった。事が起こったのは草木も眠る丑三つ時のことである。旧地獄の主の妹、古明地こいしが時たまこの寺に現れるようになったのは先日伝えたことだが、その彼女がなんと全裸で走り回っていたというのだ。
この事態を目撃したのは命蓮寺にて泊まり込みで教を読んでいた信徒の方々。彼らが言うには突如一糸まとわぬこいし氏が潜入し、一直線に目の前を駆け抜けていったという。中には惚けている隙に蹴りをくらい倒れた者もいるらしい。また、噂ではこいし氏だけでなく寺のトップである僧、聖白蓮氏までも裸で闊歩している姿が見られたという。
当記者はこの話を聞き寺の関係者に話を聞きに行ったのだが、関係者はガンとして首を横に振り何も語ってはくれなかった。何もなかったと追い返されたが、果たしてどうなのだろう。風呂場らしき部分が爆心地の如く吹き飛ばされていたのを見るに、何もなかったというのは明らかな嘘だと確信できる。目撃者である信徒にも聞きに行ったが一転、何も見なかったと意見を変えられてしまった。
古明地こいし氏は心が読めないサトリだ。自分の心もすっからかんであり、それ故意識のない、所謂「無意識」を操れるという。それを利用すれば人の意識から外れ、認識されなくなることも可能だ。だというのに何故、今回はそれをしなかったのだろうか。考えられるとすれば恐らく趣味や性癖であろう。空っぽの心だと評されているがその実、今回のことが事実ならばとんだ変態の好き物である。露出狂、という存在だろう。
これは追記だが、この仮説を裏付けられるかもしれない可能性がある。実は当記者はその時間帯、偶然ながら所用で命蓮寺の上空を飛んでいたのだ。カッパである河城にとり氏制作の映像を記録できる「びでおかめら」という機械の試作品を手にしてだ。試運転として上空から地上を記録しながらゆっくりと飛んでいたのだ。
にとり氏によれば暗闇でも問題なく映像は記録できるよう改造してあるとか。地上の事変に気付けなかったのは記者として酷く口惜しいが、この機械の記録を見れば何か証拠が残っているかもしれない。現在はにとり氏協力の元、映像の復元に尽力している。上手くいけば明日にでもこいし氏の秘められた痴態を暴けるだろう。
文々。新聞 以下次号へ続く
』
それから何日もの間、射命丸文の姿を見た者はいない。ただ、彼女の持ち物だと思われるカメラが山の中で無残な姿で見つかったという。その周囲には、夥しい数の抜けた羽が散っていた。
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