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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第10話 「お、おの……れぇ!」
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 副官は安堵の吐息を漏らすと同時に、不意に罪悪感がもたげてくる。

「本当によろしいのですか? 千でなく二千ほどでも……」
「夜間とはいえ、あまり多すぎては身を隠すことはできません。千ほどで結構。それぐらいでないと一人では処理(かた)しきれませんので」
「そうですか……では、お願いいたします」

 自らの提案とはいえ、危険な指示だと理解している。
 それを何の気負いもなく、素直に信じて一人で事を起こそうと言うのだ。
 せっかく助かった命なのに……そう副官が思い至ると、激しく罪悪感が膨れ上がった。
 
「命がけで糧食を運んでいただいた貴方にこんなことをさせて申し訳ない。奇襲が成功したらすぐに引いて下さい。もし危なそうであれば、偵察だけでも結構です」

 そう口にしてしまってから、自分はなんと愚かな……と思ってしまう。
 最初は間者だと思って無茶な指示をだした。
 しかし、考えてみれば相手は命からがら糧食を届けてくれた仲間でもある。
 疑いすぎて、仲間を信じられなくなっていたのだろうか?

「(ぼそ)……残念だな」
「は?」
「いえ、なんでもありませんよ、副官殿。では、準備をしてきます。武器は……糧食を運び入れた場所と同じですかな?」
「あ、はい。何でも好きなものをお持ちください」
「どうも……あ、そうだ。二つほどお聞きしてもよろしいですか?」

 倉庫に向かおうとしていた郷循が、振り返りざまに尋ねてくる。

「は、はい。なんでしょう?」
「貴方は何故黄巾に?」
「……はは。お恥ずかしながら、食べるためです。私は食い詰めた農民だったので……」
「……なるほど。いや卑下するつもりではありませんよ。食べられないのはつらいことですしね。ですが……いえ、もう一つお聞きしても?」
「はい。なんでしょう?」
「貴方のお名前は?」
「ああ……」

 そういえば、将軍の下について以来、副官で通していたから自分の名前を相手に伝えるのは久しぶりだった。

「自分の名は――唐周(とうしゅう)と申します」




  ―― 盾二 side ――




 さて……仕込みはすんだ。
 伝達もした。
 あとは合図だけだな。
 朱里や雛里はうまくやるだろうか……




  ―― 鳳統 side ――




 月は天頂。
 予定通りならそろそろ頃合です。

「今の状態で何も指示はなし。合図なし。伝令もなし。では、壱の策のまま、開始します」
「了解しました」

 私の言葉に、兵隊さんが設置された薪に火をつけていく。
 それは三千の兵で山を覆うように作った焚き木の数々。

「数はよし。風もよし。どんどん燃やしてください。燃えはしないでしょうけど……」

 
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