黄巾の章
第10話 「お、おの……れぇ!」
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木々の中にあるとはいえ、火を炊けばさすがに場所がばれるのは自明の理。
だが、それよりも奇襲を避けるほうが大事だ。
こちらにはまだ一万もの兵がいる。
いざとなれば数で圧倒すればよい。
「報告します! 官軍らしき軍隊が麓に現れたとの伝令が着ました。やはり夜襲を仕掛けるようです」
「ふん……浅はかだな。将軍も、私も予想済みだ。すぐに戦闘準備! 当直以外も出動させる! どうせ相手は風下だ。適当に矢を撃っても簡単に当たるぞ!」
副官は、矢継ぎ早に指示をしていく。
するとそこに一人の男が顔を出してきた。
「副官どの……? これは何の騒ぎですかな?」
「ああ、郷循どの。なに、貴方がたを追ってきた官軍がこちらを攻める気配を見せています。その迎撃の指示ですよ」
「なんと……私達のせいで」
「いや、貴方がたが来られなくともこの場所は、すでに官軍には見つかっていたでしょう。貴方がたは貴重な糧食を運んでこられたのです。これぐらいは私も予想していました。ご安心ください」
「……でしたら私にも手伝わせていただきたい。部下ともども、十分休ませていただきました。武器さえお貸しいただければ、立派に一役務めさせていただく」
「……」
副官はふむ、と黙考した。
副官としては、この男や輜重隊にはまだ完全には信用ならぬ部分がある。
しかし、砦の中に居られて内応されるより、麓の官軍への先陣として出したほうが安全ともいえる。
敵でなかったとしても、官軍に対しても有効な手だ。
攻めているほうが攻める前にまさか奇襲をうけるとは、思いもしないだろう。
それに……もしこの男が敵であるなら、ここで否というはずだ。
「わかりました。これから先手を打って奇襲をしようとしていたところです。その先鋒を任せてもよろしいでしょうか?」
「奇襲ですか、わかりました。我々だけで行いますか? それとも兵をお貸し願えるのですか?」
「……奇襲であればあまり多くはないほうがいいかもしれません。貴方がただけで大丈夫ですか?」
「敵が砦に登ってくるところに仕掛けるぐらいであれば、なんとか……」
ふむ……兵をつけて裏切られると、こちらには痛手だ。
だが、監視をつけずただ裏切らせるのも問題がある。
「では、こちらから千ほど兵を出しましょう。貴方はともかく、他の輜重隊の方々はまだ疲れもいえておらぬ様子ですし、兵はこちらの千人で奇襲を仕掛けていただけますか?」
「ふむ……そうですね。わかりました」
郷循の即座の了承に、思わず眉を寄せる副官。
先ほどからこちらの提案にまったく否と言わない。
部下とも離し、一人でこちらの手勢を率いるとなると間者であるならば絶対に渋るはずである。
(……間者ではなかった、か)
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