暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
ALO編
episode4 魔法の世界の洗礼3
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文詠唱。再び一音節で召喚された泥の壁が、俺の跳躍からの追撃を阻む。

 (今度は、騙されない!)

 先の失敗を生かして、回り込んでの攻撃をすべく泥壁を避け、

 「っ!?」

 足に衝撃を感じてつんのめった。今日見たばかりの水属性の移動阻害魔法、水の蛇(このころはこのスペル名が《アクアバインド》ということも知らなかった)だ。だが、その詠唱は先の大戦の時に見たところ、そこそこに長かったはず。この女、あの一瞬でそれをこなしたというのか。

 驚愕したものの、左手を咄嗟に地面に付いて転倒によるダメージを回避。
 と同時に、右の指を揃えての手刀で水の蛇を断ち切る。
 あの世界で鍛え上げられた判断力の賜物、その間一秒もかかっていなかっただろう。

 だが、それでも。

 「くっそ……!」

 それが大きな隙であることには違いない。
 来るであろう強力な攻撃呪文を迎え撃つべく敵を見て、

 「っ、くおっ!?」

 何度目かの驚愕に声をあげた。

 目の前にあるのは、無数の泥の壁。不自然に佇立した人間大のその障害物は、俺の攻撃をたびたび挟んだあの魔法だろう。つまりさっきの一瞬で、あの女が連続してこれだけの泥壁を出現させたことになる。どんだけ早口言葉が得意なんだ、あの女は。

 驚く……が、これは。

 (……好機!)

 敵さんがなんの為にこの泥壁の林を出現させたかは、分からない。
 だが、これだけ遮蔽物、足場があれば、俺にとって状況は格段にやりやすくなるだろう。例え身を隠す目的でこの泥壁を作りだしたのだとしても、俺の『索敵(サーチング)』スキルは謎のSAOデータ引き継ぎによって既にマスターに達している。例え探索生物(サーチャー)を呼べずとも、この至近距離ではなんの問題も無く敵を見つけ出せるはずだ。

 スキルを発揮しようと、耳を澄ますように独特の感覚を呼び起こそうとして、

 「っ!?」

 体を吹き抜けた風が、全身を震わせた。 

 突如現れたそれは、氷の竜巻…とでも表現するべき、極寒の風。
 回避しようにも、周囲一帯を包み込むように吹き荒ぶ、巨大な範囲攻撃。
 なんの魔法も使えない俺では避けも防ぎも出来なければ、轟音でまともに索敵さえ行えない。

 (っ、打てる手が、ねぇ……!)

 ALOに入ってまだ日が浅い俺は、そこまで高位の装備は持っていない。
 首都で買った革製コートは防御力こそそれなりだが、対寒、対魔法効果は薄かったようであっという間にHPが削られていく。手持ちのアイテムもクエストで得たそれはほとんどが換金してしまっており、このような状況に対応できるものはない。

 HPの残量はもう五割を割っている。
 既に、黄色の注意域。

 (……時間は、無い!)
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