Mission
Mission8 ヘベ
(4) マンションフレール302号室 C
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ワタシも曖昧なコトバしか言えない。ごめん、ルドガー」
俯いていると、頭に大きな掌が触れて、額を正面の胸板に押しつけられていた。
「無理すんなよ。言えないなら、いいから」
「……どうしたの? ユリウスの秘密にあんなに反発してたアナタらしくない」
「う、それは、まあ、兄さんは家族だし、男同士だし、色々複雑っていうか、腹立ったっていうか」
「女の子だったら許してしまうの? オンナの敵」
「アホか! 俺だって、隠す側にも事情とかプレッシャーとかあるって分かるぐらいには成長したんだっ」
ここで困らなければいけないのに。ルドガーのユリウスへのコンプレックスを利用してユリウスに対する反抗心を限界まで溜め込ませるのだから、ルドガーの成長はむしろ忌避すべきものなのに。
ユティが感じたのは、一つ男らしくなった年上の友人への微笑ましさだけだった。
「その、『審判』については言わなくていいから、1コだけ聞いていいか」
「どうぞ」
「今日、てか、昨日のアルバム作り。ユティはさ、楽しかったか?」
――この瞬間、ユースティア・レイシィの虚飾は剥がされた。
(ユースティアのウソツキ。全然できてなんかなかったじゃない。質問一つでこんな、あっさり、崩れて。でも、だって、だって写真は、カメラはアルおじさまがくれた宝物で、確かにそこに在ったことを証明してくれるモノで、だから、尊い、って)
やがて彼女はルドガーの背中に両手を回し、きつく締め返した。
「うん。すごく、楽しかった」
この朝、日が出ずるように彼女の中で新しく生まれたものがあった。
そのものの名は、覚悟。
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