隅々に眠る
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むう。あたしは可愛くねえのか? 姫希」
「葉と張り合うなよ。可愛いか可愛くないかって議論の上で、幼いってのは大きんだぞ」
「けっ。姫希はただのロリコンかよ」
「違う! オレはロリコンじゃないぞ!」
「分母、ロリコンって何?」
「ああん? お前みたいなガキ相手に興奮する変態のことさ」
「姫希、変態なの?」
「断じて違う!」
案内図をスルーして階段を上っていくと、目がくらむほど長い廊下に出る。
成程二階は教室などが並んでいるらしく、その数は計り知れないくらいのものだ。
もし仮に、オレが大学に進んでいればこの教室の配置を無意識的に覚えるくらい通い詰めることになっていたんだろうか。
それってきっとすごいことだけど。
「もう一個上だな。総務課の上って言ってたろ。ちょうどあそこに総務課って書いてある」
「本当だ。よくあんな難しい漢字読めるね、分母。そうむかって読むんだ、あれ」
「へっへ。あたしはこれでも高学歴だからな!」
「ねえ姫希。分母が高学歴って言葉の意味をわかってないわよ。教えて頂戴」
「嫌だよ。葉から教えてやってくれ」
「お、おい! そういう反応って本当に傷つくからやめろよ!」
「そうだったな。分母って意外と内面は女の子らしいから」
「褒められてんのか? それ……」
「男らしいって言われて喜んじゃったら、それはそれでやばいんだよ? 分母」
「うおー……、こんなちんちくりんに女を説かれた……」
「はは。女としては葉の方が上手だったのかもな」
さらにもうひとつ階段を行く僕ら。
そこまで長いものではないはずなのに、度々人間とすれ違う。
格好からすると学生のようだった。案の定、向けられる視線は心地いいものでない。
「ここかな。学長室って書いてある」
「本当だ。よし、じゃあ入るか。こんちはー」
「お、おい――」
止めようと思ったときにはすでに遅い。
物事は気づいていから対処するようじゃ全く遅いんだってこと、忘れていたみたいだ。
いや、忘れていたのは分母の礼儀のなさか。
ノックの一つも知らない馬鹿じゃないはずだけど、ここでそれを行おうという意識が出てこないんだから、結局それもいらない知識に過ぎない。
「やあどうも。忘却下宿の方々ですね。今日はわざわざと遠くからお越しいただいて、本当にありがとうございます」
出迎えてくれたのは真っ白な頭をした初老の男性だった。
以前にオレ達の職場であり、住処である忘却下宿を訪ね、そうして忘れ物を見つけた人間。
濃く刻まれたしわを豊かに変化させながら笑顔を浮かべるあたり、あの経験を受け入れるのに障害はなかったようだった。
「今日は。今日は報酬のお話と、それから忘れ物について、最後のお仕事を完了しに参りました。電話で先日に説明したとおりなんですけ
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